第44話 天空の島

 敵の行方を追う。

 この先に何があるのだろうか。



 この先に俺が求めているものがあるというのだろうか。

 《能力者》の秘密が。

 メカニズムが。



 空が青い。

「おおぉ」

 思わず息が零れ落ちる。


「これが青空というものなのか。とても気持ちがいいな」

 微かな風を髪が撫でる。

 今まで思い悩んでいたことが嘘だったかのように薄れていく。

 ――――爽快感。


「こんな時がずっと続けば良いのに」

 抱擁されている気分だ。

 母性を感じる。


 温かくて、心地いい。


 でも、そんな幸せな日々は『破壊』と『不幸』の前では無意味なのだ。

 それを俺は一番よく知っている。


 幸せの中に潜む怪物を。

 闇を。


 それを恐れているのだという事は俺が一番よく理解をしている。

 そして、それは突然やってくるというという事も……。


「あ……」

 雲間の合間から大量の水が流れるのが見えた。

 微かに虹が橋を架けているのも。


 あれは……島か?


 島から滝の水が流れ落ちて水色のカーテンが幕を下ろしている。

 美しい薄緑の緑葉が天の光に照らされて明るく反射する。


 島の所々に白い建物が見える。

 何で出来ているのかまでは分からないけれど。


 島の下の方に空洞がある。

 あいつら、あそこに向かってる。

 俺も行かないと。


 そう思って、追いかけるとサイレンのようなものが鳴った。


 ビッーーーーーーーー!!!!!

『侵入者を感知しました。侵入者を感知しました。防衛隊員は直ちに警備体制を整えてください。繰り返します――――』


 や、やべーー。

 大変なことになっちまった。

 どうしよう。

 このままじゃ捕まってしまう。


「うわっ。なんか来た」

 対応が速すぎる。


 どこか隠れるようなところは無いのか。

 周囲を見渡して見るが、そんな身を隠すようなところはどこにもない。


 バイク型の乗り物に乗って彼らは近づいてくる。

 顔をすっぽりと覆うヘルメットに強化外骨格パワードスケルトンを着ている。


「くそっ!! ここまでかよ」

 覚悟を決めて目を瞑る。


 ドゥルルルルル――――。

 バイクの駆動音が通り過ぎて行った。


 助かった?

 もしかして、《透明化》の能力応用した服を着ているから?


「これなら行ける」

 俺は敵の跡を付けるのを続行することにした。

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