第42話 ブラック・チルドレン__6

「まだまだだ。みんな死ぬまで躍ってくれ」

 《パパ》は左手を俺たちに向ける。


 紅蓮の光が4人の中心に表れる。


 寒気がした。

「みんな、逃げるんだ!!」


 直後、爆炎が広がる。

 その場だけ小さなクレーンが出来る。


 この能力は、ブルーの《発火パイロキネシス》。

 本当に俺達の能力を武器にしたのか。


 この為だけに。

 この為だけに俺達は産まれてきたのか。


 ――人権も。

 ――自由も。

 ――生活も。

 何もかも俺達は管理されて生きてきた。

 生かされていたということか。


『用済みだ。だから抹殺する』


 先程の《パパ》の言葉は本当らしい。

 俺達の命はここで終わりだ。

 俺達はここで死ぬ。


「でも――――」

 それだったら俺達はなんの為にここに来た。


 俺達はその自由を、人権を、『自分』を取り戻すためにここにいるんだ。

 闘っているんだろうが!!


 だから、絶対に諦める訳にはいかネェ!!


 《念力サイコキネシス》を応用して、自分の体を動かす。

 《パパ》に向かって体が突進をする。


 と、思ったら、《パパ》の姿が消えた。

 ホワイトの《瞬間移動テレポート》か、もしくは、イエローの《透明化》の能力だ。


「あいつ、どこに行った」

 周囲を見渡すが、見当たらない。


「あ! みんな、上!!」

 ホワイトが声を上げる。


 上空に《パパ》がいた。

 右手を翳す。


 右手を握りしめ右方に振りかぶる。

 すると、俺以外の四人の体が吹き飛ばされた。


「みんな!!」

 四人の元に行こうとした時、赤い点が見えた。

 ――――《発火パイロキネシス》。


 紅蓮のきのこが生える。

 硝煙が舞う。


 微かに四人の姿が見えた。

 横倒れて血を流している四人の姿が。


「く、クソッたれ!!」

 頭の中で何かが吹っ切れる音がした。


「このやろうぉぉぉぉ!!!!」

 そこからの記憶はほとんどない。


 俺が覚えているのは、《箱庭》が崩壊していく様と、扉から頭から血を流して横たわっている《パパ》の姿だった。


 俺はついに逃げ出すことが出来たのだ。

 この《呪縛》から逃げることが出来るのだ。


 四人の親友の命を犠牲にして俺は生きるのだ。

 俺はもう引き戻すことが出来ない。


 これから俺は自分一人の力でこの人生を生きていかなければならない。

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