第41話 ブラック・チルドレン__5

 俺は十字路に飛び出した。

 右方に敵。


 右腕を伸ばして能力を発動。

 ――――念力サイコキネシス。


 敵が引き金を引く前に能力でねじ伏せる。

「ぐわっ」

 壁に叩きつけて気絶をさせた。


 右手で『ついて来い』と合図をする。

 階段を降りる。


 地図によれば、俺達が今いる場所は4階だ。

 すぐ降りられる。


 簡単には抜け出せないだろう。

 それでも、挑戦する価値はある。


 俺達は難なりと1階に降りることが出来た。

 夜間だから警備が薄いというのがあったのかもしれない。


 でも、不思議と胸騒ぎがした。

 何か悪いことが起こると。


 でも、それでも今は前進するしかない。


「このまま真っ直ぐ行くと出口に出られるぞよ」

 俺達は出口に向かって走った。

 広場に出た。


 目の前には大きな鉄の扉が神妙に佇んでいる。

 俺たち5人の足音だけが鳴り響く。


 丁度、真ん中に位置した時、部屋全体が暗くなった。

「な、なんだ?」


「私は君たちを待っていたよ」

 その時、声がした。

 掴みどころの無い声だ。


「君たちが来られると分かっていたよ。いやぁ、素晴らしい」

 テンポの遅い拍手が空間の中に響き渡った。


 いつの間にか、目の前には一人の男が前方の扉の前に立っていた。

 漆黒の仮面を被った一人の男。


 黒いマントを羽織り、黒い服を(恐らく、魔防具のようなもの)着ていた。

 逃げようと後ろを向く。

「逃げられっこないよ」

 彼が指をパチンとはじくと、部屋全体が照らされた。


「逃げられっこないよ」

 背中に力を感じたかと思うと、壁に叩きつけられた。

「ぐっ……」

 激痛が全身に走る。

 床に張り付くように仰向けに倒れる。


 《やつ》はケタケタと愉快そうに嗤う。

「ははは、ごめんねぇ。まだ試作段階だからさ。これね、《念力義手サイコハンドって言うんだ。素敵だろう? ホワイト、君の力を応用しているんだ。一通り、君たちの力の技術化は終えた。微調整がまだまだだけどね。でも、私は一回やってみたかったんだよ。君たちとこの君たちの力を応用した魔道具で対決してみたかったんだよ」

「俺たちの力を応用した魔道具……だと?」

「そうだ。これがこの魔道具の実技テストだ。結果次第では君たちを全員削除することになる。まあ、結果が良かったら君たちはもう用済みだからいいか」

「お、お前……」


「君たちの命は誰が生んだと思っている? 私はお前たちの言う《パパ》だ」

「なっ!?」

 何かが崩れ落ちる音が心の中でした。

 自分を支えていたものが落ちる音――――。


「お前たちの命が今まで存在し続けた理由もこの私が食事、寝床など生活最低限のものを用意したからだろう。だから、お前らがここで死ぬのは俺に対する義務だ。責任だ。だから、大人しくしていろ」

 ゆっくりと近づいてくる。


「だ、誰があんたなんか言いなりになるか!!」

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