第14話 迫り来る者達

「くそっ!! 動け! 動けよ!」

 何度命令しても動かない。


 どうしたら良いんだ!

 取り敢えず、敵に向かって動くことをイメージした。

 そう。

 イメージだ。


 歩くというイメージ――――。


 ズ、ズゥゥン。

 一歩、動いた。


 う、うご……いた?

 もう一度、敵に向かって歩くということをイメージする。


 もう一歩、動いた。

「よ、よっし!!」

 どうやら、この機体を動かすのにはイ・メ・ー・ジ・を・す・る・ということが重要になってくるらしい。


 よし。

 これならいけそうだ。


 敵に向かって走ってみる。

 金石の機体は走った。


 そして……。

 敵の顔面を殴る!


 誰も乗っていない人型魔装兵器ホムンクルスは抵抗する力もなく地面に倒れた。

 地響きがした。


 一方、時雨はというと、ライフルで撃って機体を蜂の巣にしていた。

「なんて音出してんのよ!! そんな音を出したら武装兵がこっちに来ちゃうでしょ!」

「いや、お前の銃を撃つ音とそんなに変わらねぇじゃねぇか」という本音を言ったらぶち殺されそうだったので、柔らかく、

「そうだな。すまん」

 とにかく謝ることにした。

「そうよ。こういうのは一発で殺るのがセオリーなのよ」


 本当にこいつは女なのかと疑ってしまった。

 とんでもねえことを言うなこいつ。

「分かったよ」


 倉庫の奥から人型魔装兵器ホムンクルス用のライフルを取り出す。

 人型魔装兵器ホムンクルス用の武器は、人型魔装兵器ホムンクルスとは別に魔力の供給場所がある。

 例えば、この魔術光線銃マジックビームライフルでは、本来では弾が入る遊底ボルトのところが魔力庫になっている。

 引き金を引けば、この魔力庫から魔力の塊となった高魔力の光線が発射されるというわけだ。


 左手でライフルを支えて(この部分をフェアハンドと言うらしいです)、右手の人差し指で引き金に触れる。

 フェアハンドには、魔力調整をするためのダイヤルが取り付けられている。


「大体このくらいか」

 ダイヤルを親指で回して魔力を調整する。

 上手くいくと良いんだけどな。


 照準を敵の人型魔装兵器ホムンクルスの頭部に合わせ、引き金を引く。

 低い銃声が鳴り響く――――。

 銃口から一塊の真紅の魔力弾が射出される。


 ドゥゥゥン!!

 魔力弾は敵の人型魔装兵器ホムンクルスの頭部をかすめ、地面を抉り小さなクレーンを作った。


「ちっ。外したか」

 もう一度だ。


 再度、照準を合わせて引き金を引く。

 魔力弾は見事敵の人型魔装兵器ホムンクルスの頭部に命中した。

「よっしゃ!!」

 頭部を破壊した。


 これで、動けなく――――。

「駄目よ!! まだよ! コックピットを破壊しないと完全に『殺した』ことにはならないわ!!」

 時雨の怒涛の声。


「えっ?」

 そう声が出た時には、時雨はコックピットを壊していた。

「もう。これじゃ、先が思いやられるわね。いい? 手足や頭を破壊するのは敵の戦闘力を削る時よ。人型魔装兵器ホムンクルスは、人が入っている時はコックピットを狙うのが定石よ。まあ、相当な実力差がない限りは一撃でやられることなんて無いんだけどね。おっと、丁度今話したことを実践することになりそうね」


 倉庫の外からは機械の駆動音が聞こえる。

 複数。

 しかも、その音はどんどん近づいてくる。


 もしかして……。

「この音は全部魔装兵器ホムンクルスなのか!?」

「少し違うわね。この音は人型魔装兵器ホムンクルスではないわ。機動接近型甲殻兵器ドライブアーマーよ!! とりあえず、なんでもいいから奥の武器を取って外に出るわよ! この中じゃ、戦闘をするのには狭すぎるわ」

 彼女の言うとおり、倉庫の奥に行って光輝剣ライトニングソードを取り出す。


 光輝剣ライトニングソード――――。

 超高熱を発し、魔術式でその熱の塊を剣と化した剣のことだ。

 その高熱故に敵の装甲を斬ることが出来る優れもの。


 時雨は、人型魔装兵器ホムンクルス用の剣を――――大型刃型武器ジャイアントブレードの剣を取りだした。

 銀白色に輝く。

 大型刃型武器ジャイアントブレードの剣を構えた彼女は、さながら騎士のようだった。


 今、彼女はどんな表情をしているのだろうか。

 どんな気持ちなのだろうか。


 恐らく、戦闘をするのは彼女にとって初めてではない。

 だとしたら、どんな気持ちで人を過ち、闇の世界へと葬ってきたのだろうか。

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