15C 現時点での登場人物(第二版 01,NOV,199)

・現段階での登場人物


【ユリエル(Ulyel)】

フルネームはユーリエル・テス・エルシダシア(Euryel tez Elcidusia)。その意は「エルシダ家被後見人たるユーリエル」。もと東方領主第二秘書であり、王都魔導学院出身の魔導士。

本名はルカ・エト・ベルフェリエ(Luca et Velferier)。二十年前に壊滅した王国北方領主の嫡子であった。

魔導院の制服に臙脂色の外套。翠緑色の肩まで届く髪を大きなキャスケット帽の中にまとめている。

風貌は十歳児。実年齢は二十一歳児。男性。ベルタが評するところの「プライドは高いが自己肯定感が薄いとてもめんどくさいタイプ」。一人称は「僕」。

北方領の壊滅は自分の出生が主要因であると考え、その贖罪の方法と、唯一の生き証人であると思われる“教授”を探す。

度を越したヘタレであり、現代風に言うならば典型的な“陰の者”。異様に低い精神年齢を具える、コンプレックスの塊のような人格であったが、ハナやフウと暮らす三週間のうちに、だんだんと精神的に成長する。彼女らに情が移り、また自らの“贖罪”のため、今では自分を犠牲にしてでも救おうと考えているようだ。今まで友達らしい友達がいなかったせいか、かなり友情が重い。

自身の周辺に漂うマナをちょっとだけ自由に扱える、魔法を使うのにマナの出口たる“宝玉”を要しない、自然治癒力が並外れて高い、エロ本を鞄の底に隠すなどのちょっとした特異体質らしい。

腹部の見通しが若干良くなったため入院中。


【ハナ(花)】

本名は“コトトイ・ミオ(言問 澪)”。武装奴隷商の馬車から救出されたのち、トラウマにより人格が剥離。幼児のような振る舞いを見せ始め、以降姉の名であった“ハナ”を名乗る。王国の南東にあるアシハラ出身、十四歳の異人ゼノ。女性。一人称は「ぼく」。ユリちゃんに対してのみ「おねえちゃん」。ユリエルとおそろいの翠緑の髪がトレードマーク。馬鹿力。

動きやすい服装にスカート、ピカピカのチェストプレートを纏う。武器は鎚頭ヘッドの大きめなウォーピック。ユリちゃんが大好き(妹的な意味で)。

感情の抑揚が激しい。人を殺害することをスイッチに、壊れてしまった本来の人格“ミオ”が発露するようだ。


【フウ(風)】

ハナからはふーちゃんと呼ばれる。アシハラの巫女シャーマンはファミリーネームを持たないものらしい。十四歳の異人ゼノ。黒髪の女性。垂れ耳なので耳は目立たない。いつも眠たげな目をしているが、かなりよくしゃべる。体力はそこまででもないが腕力が意外とある。王国風の白いローブを纏う。一人称は「わたし」。

壊れてしまったハナを救うため、自らの手を汚すことを決意する。

性格は冷静かつ直球型ついでにややゲスい。かっこつけているユリエルを翻弄して遊ぶのが好き。(ユリエルのしりに刺そうとした)蛇の装飾をあしらった宝玉仕込みの杖を使い、五穀豊穣のための“術”を行使する。雨風を呼ぶ術、人体能力を多少強化する術、簡易的な治癒促進術などを使える。


【ベルタ(Belta)】

ここに至ってまだ氏素性不詳。ハナからはべーやんと呼ばれる。二十歳前後の王国の人。南東の刀による居合を得意とする、いまだに謎の剣客。性格は並外れて不器用。結わえた美しい金髪、きれいにアイロンをかけられた礼服の腰に二本の刀を差す。だがその容姿の維持を本人が非常に面倒がる。

ハナとフウのふたりを奴隷商の馬車から救い、安定した生活を送らせてやるため、自身に生活力が皆無であるにも関わらず奮闘する。今はコワッパが腹を壊してリタイア中につき代理班長様。がんばれ、本当にがんばれ。


【エルシダ卿(Lord Elcida)】(New!)

フルネームはアルフォンソ・テオ・エルシダ(Alphonso theo Elcida)。王国東方領主。ユリエルの父(仮)。

ベルタ曰く、アルフォンソに育てられたユリエルが「どうしてそのような難のある性格に育ったのか、不思議なくらい」いい人。色々ととてもタイミングのいいお方。


【タイレル卿(Lord Tyrelle)】(New!)

フルネームはヴィンテス・テオ・タイレル(Wintaes theo Tyrelle)。デカいオカマで、王国商務卿。伯爵。自身もいくつかの商会のオーナーである。ユリエルちゃんが大好き(性的な意味で)。


【バルトリア博士(Doctor Baltrea)】(New!)

フルネームはデナリオ・レスティオン・ガルシア・ランス・テル・バルトリア(Denario Restione Garcia Lance thell Baltrea)。

魔導医学博士。残念ながら、ユリエルらと会ったすぐ後にお亡くなりになっていた。昔ながらの“魔法使い”であったが、己に限界を感じて親友の実験結果を使い博士となり、またそうしたことを悔いながら生きていた。享年百三歳。持病は腰痛と痔。

あいたーっ、いたたたたたたたた。


【グシュタール教授(Magister G'shthal)】(New!)

フルネームはジャンピエール・グシュタール(Jean-Pierre G'shthal)。生死不明。異常知性の人で、バルトリア曰く「魔導学の基礎理論をほぼ独力で書き上げた男」。二十数年前まで王立魔導院に在籍していいように使われていたが、ある日を境に姿を消す。それ以降はどこかにある死火山のカルデラ湖畔に持っていた別荘を研究所として余生を過ごしていたらしい。ユリエルの探し人である可能性があり、またハナを治療出来る技術を持つ可能性がある。


【ルクセンハイザー教授(Magister Luxenheiser)】(New!)

フルネームはエーリカ・エメ・ルクセンハイザー(Erika emme Luxenheiser)。

七十代の魔導錬金学教授。バルトリア博士、グシュタール教授と仲が良かったらしい。

学園改革への意欲を見せているが、難航しているようだ。普段は隠しているようだが、謎の訛りを持つ。


【マーヴェリック(Maverick)】(New!)

フルネームはルキウス・“マーヴェリック一匹狼”・エト・ルクセンハイザー(Lucius "Maverick" et Luxenheiser)。

二つ名はおそらく自称。


【ドナテロ(Donatello)】(New!)

フルネームはドナテロ・エト・バルトリア(Donatello et Baltrea)。バルトリア博士の曾孫。眼鏡をかけた学生。ユリエル以上に女性が苦手。


【フランツ(Franz)】(New!)

ベテランヴィジル。推定五十歳。超シブい。主にユリエルからの憧れの的。


【メラニー(Melanie)】

組合の受付長。花の三十歳。


【テッド(Tedd)】(New!)

メラニーの手下。丸眼鏡。


──────────


・用語


魔素マナ

生命力という言葉にも置き換えられる。マナは俗称。学術的には魔素が正しい。

遍く場所にほぼ均等に分布し、あらゆる生命活動、物理現象などに対し「熱量を力へと変換する際の触媒」として作用する。あるだけで力の伝わり方が強くなり、なければないほど伝わりにくくなる。

約四十年前に魔導院本院にて存在が立証され、本格的な魔導学(魔法学、魔導医学、魔導錬金学の総称)が生じた。かなり新しい学問。

場に満ちるマナを環境魔素、生物の体内を循環するマナを固有魔素と表現する。固有魔素が著しく減少すると、生命活動に支障をきたす。

一般的に、環境魔素は薄く、生物の固有魔素はきわめて高濃度。


【魔法】

行使者が宝玉を通し投射した固有魔素に「意志」による干渉をかけ発現させる現象と定義される、らしい。意志というものが脳波的なアレなのかどうかは不明。

つまり、使えば使うほど固有魔素は減じるため、最終的には命が危ない。減じた固有魔素は時間が経てば戻るが、加齢とともにフルチャージまでの時間は伸びる。減ったマナのチャージは周辺から補っているわけではないようだ。


【低魔量地帯】(New!)

何らかの原因により、本来均等に広がる環境魔素が著しく減少している地帯のこと。熱量を力へ変換しにくい場所であり、すべてが“動きにくくなる”と比喩される。

内部では気象や物理現象が外とは異なる。また生命活動も同じで、内部に入った個体は徐々に固有魔素を消失していき、きわめて緩やかに死へと至る。

北方領ベルフェリエ壊滅と時期を近くして突如出現する。外環境との比較が意味を成さないほどに異質な世界であるため、魔導院による調査もあまり進んでいない。


【竜】

災禍の象徴として人々に恐れられる。

王国周辺では百年近く出現していなかったが、最近はしばしば高空を舞う姿が見かけられるようになる。


【王国】

大陸最大の国家。ティエラマグナと呼ばれる広大な平野の全土と周辺の山岳を領土とする。

二十年前の大飢饉により北方領ベルフェリエが壊滅するも、なお海洋貿易が盛んな商都を擁する南方エラニア、聖地を擁し宗教・学問の中心たる西方コグニティア、肥沃な大地を擁する東方エルシダとその支配域は広大である。王都は平原中心に聳えるモンスベルトラムと呼ばれる休火山の斜面に築かれた要塞都市。

十月七日に国王が死去。現在は王太子が暫定的に執政権を握る。


【ミドルネーム】(New!)

王国の人が名乗るミドルネームは、ある家に於けるその人物の立場を表す。貴族が使用する。


【ベルフェリエ】(New!)

王国北方領。二十年前の大飢饉にて壊滅する。現在は旧領の大半が“低魔量地帯”となっており、あらゆる生物の生存に適さない。物騒な言い伝えだけが残されている。


【エラニア】(New!)

王国南方領。数多くの港を有し、貿易により莫大な富を稼ぎ出す王国の財布。四年前(王国暦一九五年)に南方自治議会で独立が叫ばれ、それに呼応して王都が派兵、内戦となった。南東アシハラと手を結び見事に王国軍を撃退、たった四ヶ月で講和を結び、数多くの権利を勝ち取る。かねてより険悪な関係だった他領や王国議会派貴族からの敵視はこれで決定的なものとなった。


【アシハラ】

王国の南東、高山地帯にある小国。王国では訛って“アシャラ”と呼ばれる。百年前から数少ない登山道を関所で閉ざし、ゆるやかな鎖国中。犯罪者などが使うきわめて危険な“非合法登山路”というものがあるらしい。武器や人物名から、和風なやつが想像される。


異人ゼノ

アシハラの主要民族を構成する人種。シルエットは人間に近いが、顔は犬のよう。短いマズルを持ち、その身体は短い被毛で覆われる。大きな耳と尻尾を持ち、他人種からは“人とは異なるもの”の意で、しばしば侮蔑を込め異人まれびとと呼称される。高地民族のため、低地では基礎的な身体能力が若干高い。自民族を他民族と等しく「人間」と呼び、その区別をしない。


【王国の貨幣制度】

金貨、銀貨、銅貨、手形が流通する。単位は銀貨一枚が一ミナ。ユリエル曰く、「一ミナで安パン一斤」を買えるため、現代日本で例えると百円程度か。また銅貨は銀貨以下での少額決済に使用。百枚で一ミナに相当する。単位は割愛。金貨は二十ミナ相当だが、あまり流通していないようだ。


【魔導院】

西方の学都に本院がある。王国の魔導学研究の中心。王都には王立魔導院と、王侯貴族の子女やそれに準ずる者、教授陣からの推薦者を教育する魔導学院がある。紋章は「羽根と双頭の杖のクロス」。


【ヴィジル】

王国独自の制度で、登録自警団員を指す。名の通り王都の自警団ヴィジランテに端を発する。悪化した治安を取り締まる警察力が不足した際、自警団に王国が出資し、公的な登録制の民間衛兵制度として確立した。固定給はなく、平時は住民の依頼をこなし報酬を受け取ることで生計を立て、「なんでも屋」という別称の由来となる。加入・離脱が簡単なこともあり、農閑期には出稼ぎでヴィジルとなる農夫も多い。

有事に際しは組織化され、正規軍の部隊長を据え逮捕権を有する準軍事組織として機能する。また一時的に離脱は許可されなくなり、所定期間内に組合へ出頭しない者については一定の罰則がある。

登録制とはいえ“衛兵”であるゆえ、国内外から「王国の兵力」と看做される。そのため行動には大きな制約がかかるが、四人までの班単位で行動する場合に限り行動・移動の大幅な自由が認められている。ゆえに通常は四人単位で班を組織し依頼に当たる。平時にこれを上回る単位で行動する際は、衛兵司令部と軍の双方にそれなりの量の書類を提出し発行される許可証の携帯が必要となる。近隣諸国との盟約により、班単位であれば簡易な検査で国境を通過できることが多い。

ヴィジルはその功罪によりランクが定められ、一定以下であれば一部義務を負わない代わり逮捕権を始めとした各種権利に制限がかかる。これは制度を悪用することへのセーフガードとして機能する。逮捕権を有した“認定ヴィジル”は通称「腰紐」と呼ばれる。認定ヴィジルには、明確な犯罪行為や治安擾乱行為を目撃した際にはその対処が義務付けられ、遂行者には手当が出る。

ヴィジル登録に必要な条件は極めて少なく、年齢・性別制限がない上に王国国民である必要すらない。そして王国が直接発行する「特務」をこなした外国人に対しては、国民としての権利が保証される特典がある。

特務はヴィジル個人、あるいは班を指定して発行されるため、ランクや功績はとても重要。

法典には“王は登録自警団員に対し、所定の功績を以て、恩賞として王国臣民としての諸権利を下賜する”とある。



[初版  王国暦一九九年十月一日]

[第二版 王国暦一九九年十一月一日]

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