第24話
(楓)
岸野さんは本当に顔に出やすくてわかりやすいです。
楓は心の中でほくそ笑んでいた。
特にわかりやすくなったのはストレートフラッシュで勝った後からだった。
岸野さんは隠しているつもりなんだろうけど、今も口を強く噛みしめている。
負けたのがよほど悔しいのだろう。
早速カードを配っていった。
♤5、♡8、♢9、♢A、♧A
ワンペアか……。
今の山札を見る限りこれが今回最後の勝負になる。
最後くらい花を持たしてあげても良いけど……。
「岸野さん、いいカードを引きましたか?」
「あ、あぁ、そうだな。結構良い感じだな」
口ではそう言ってるけど、目は泳いでいる。
あまり強いカードではないのだろう。
岸野さんが勝てそうにないなら負けるのも難しそう……。
次にハルさんは……。
「ハルさん、さっきから妙に静かですね。どうかしましたか?」
「う、ううん、なんでもないよ……」
なんだか今まで見たことのない反応……。
どこか驚いている風にも見えるし、そう考えるとハルさんにはいいカードが入っていそう……。
「それじゃあ美澄は何枚交換するんだ?」
今までに出たカードを考えて、山札に残っているカードを予想する。
Aはもう全部出てるはずだからスリーカードは狙っても仕方ない。
8と9は前回は出ていないので全部山札にあるか、岸野さんかハルさんの手札の中にあるはず。
5は一枚だけ出ているし、今狙うなら8か9のどちらかかな。
「わかりました。私は二枚交換しますね」
Aがある以上考えなくても良いのだが、ついカードの強さを考えて9を残してしまう。
二枚のカードを捨てて、山札からカードを引く。
引いたカードは♢6、♧9だった。
さすがにフルハウスまでは行かなかったが考えられる限り最高の手に仕上がったはずだ。
「それじゃあ俺は三枚交換するな」
岸野さんはカードを三枚捨てて、カードを引いていた。
そして、一瞬眉が険しくなった。
いいカードは引けなかったのですね。
その反応後は岸野さんはなるべく無表情に務めていた。
ただ、たまに堪えきれずに眉のあたりがピクッと動くのがおかしかった。
笑ってしまうのは悪いかとなるべく表情に出さないように気をつける。
「ハルは一枚交換するね」
ハルさんが一枚カードを交換する。
「やっぱり枚数が少なくなってくるとダメだね。楓ちゃんはどうだった?」
「私もぜんぜんですね」
どうやらハルさんが私の結果を探りに来ているようだった。
だからこそ表情が出ないように注意する。
「岸野さんはどうですか?」
「俺は……勝負するぞ」
岸野さんが不適に微笑む。
ただ、緊張しているようで手が少し震えている。
ここまで表情に出るのも珍しい。
「私も勝負しますよ」
「ハルも大丈夫だよ」
「それじゃあ全員勝負だな。ではオープンするぞ」
まずは岸野さんのカード。
♡2、♧2、♢5、♢J、♢Q
「ワンペアだ」
次にハルさんが見せる。
♧6、♧8、♢8、♧10、♤10
「ツーペアだよ」
これで岸野さんの負けが決まった。
まぁあれだけわかりやすかったら仕方ないですよね。
楓は苦笑を浮かべる。
「では私ですね」
楓も自分のカードをめくる。
♢6、♧9、♢9、♢A、♧A
「ツーペアです。数字を見たら私の勝ちですね」
私が微笑むとハルさんがテーブルに顔を突っ伏す。
「絶対に勝ったと思ったのに、楓さん強すぎるよー」
「そんなことないですよ。ハルさんも強かったです」
お互いが称え合う。
「えっと……、俺は?」
岸野さんが聞いてくる。
ただ、私たちは目を背けた。
「えっと、岸野さんは……」
「あははっ……、俊兄は分かりやすすぎるよ……」
苦笑を浮かべるハルさん。
「そんなにわかりやすかったか?」
「はい、こう眉のあたりがピクってなるんですよ。笑いを堪えるのが大変でしたよ」
「マジか……」
岸野さんはがっくりと落ち込んでいた。
「それじゃあポイントの計算ですね。でも、計算するまでもないですよね」
「あぁ、何でも好きなことを言ってくれ」
「えっ、なになに? 何の話?」
「あぁ、ポイントの計算で勝ち負けを決めていただろう? 勝った人が負けた人に好きな願いを一つ言えるんだ」
「いいなぁ……。楓ちゃんがお願いを言えるんだね」
「はい、でも、どんなことにしましょうか……」
「それならハルに良いアイディアがあるよ!」
ハルさんがニヤリと微笑んだ。
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