第22話
これはもちろん勝負一択だ。
ここで決めてしまえば楓にどんな手が入っていても勝てるはず!
「次は楓から交換したらどうだ? 俺は後でもかまわないが」
「そう……ですね。これだと……うーん」
楓は少し迷っているようだった。
もしかして、何パターンか向かえる役がある手札なのだろうか?
そういうときって迷うんだよな。
引いてからやっぱり変えなかったらよかったとか。事実俺の手も今だとワンペアが出来ている。
勝負するためにはこれを崩さないといけない。
でも、ここは勝負するべきだ。
こんな良い手札もう二度とお目にかかれないかもしれないからな。
俺が覚悟を決めると楓も大きく頷いた。
「決めました。私はここでは交換しません!」
まさかの選択だった。
もしかして、すでにストレートとかが出来ていて、もっと大きい役を狙うかどうか迷っていたのだろうか?
「……本当に良いのか?」
「大丈夫です。岸野さんはどうされますか?」
「俺は……一枚交換するぞ」
♡4を捨てるとカードを一枚引く。
その瞬間に俺の動きが固まってしまう。
う……そ……だろ?
カードを持つ手が震えてしまう。
俺が引いたカードは♧2だった。
つまりこの時点でストレートフラッシュが確定したわけだ。
これなら確実に勝てると思わず笑みがこぼれてしまう。
「よっぽど良いカードを引いたんですね」
楓が俺のことを探ってくる。
「どうだろうな。ただ、よほどのことがない限り負ける気がしないぞ。降りるなら今のうちじゃないか?」
「その言葉をそのままお返ししますよ」
意外と強気な楓。
まぁ一回目からカードを変えていない時点で何かしらの役が出来ているのだろう。
それならばよほどのことがない限り勝負に来るだろう。
まぁ、それが後悔することになるんだけどな。
「じゃあ、勝負だな」
お互いにカードをめくる。
♧2、♧3、♧4、♧5、♧6
♢3、♢4、♢5、♢6、♢7
まぁ当然俺の勝ちだよな。
……えっ?
「えっと、同じストレートフラッシュの場合、数字の高い方が勝ち……でしたよね」
「ちょ、ちょっと待て! 一体どういうことだ? ふ、普通こんなにポンポンとストレートフラッシュは出ないだろう?」
「出ちゃったものは仕方ないですよ。これで私がプラス四で岸野さんがマイナス四ですね」
どうしても信じられずに何かカードにいかさまがしてあるのではと調べる。
ただ、カードには何もおかしいところはなかった。
そうなると配りかたか?
それなら楓が何かしているのかもしれないな。
……よし。
「それじゃあ次を始めましょうか」
「その前に次は俺が配らせてもらっても良いか?」
「……? はいっ、どうぞ」
楓から残りカードを受け取るとまずはカードに仕掛けがないかを念を入れてチェックする。
ただ、それはなかった。
本当に運が悪かっただけなのだろうか?
とにかく何も仕掛けられてないならと念を入れてカードをシャッフルしておく。
そして、配る順番を楓からにする。
そして、恐る恐るカードを開く。
♤2、♤5、♧8、♧9、♢9
結果はあまりよくないもののなぜか安心できた。
楓の方はどうだろうか?
彼女の顔を伺うとやはり考え込むような表情を見せていた。
ただ、今までもそんな表情を見せてきて、俺以上の結果を出している。
これはブラフなのだろう。
俺は改めて自分のカードを見る。
ここから上の役を目指そうとしてもスリーカードくらいしか狙えない気がする。
それでもちょっと上を目指してやるべきだな。
「楓は何枚交換する?」
「私は二枚にしておきます」
楓がカードを二枚捨てて代わりに二枚受け取る。
「それじゃあ俺の番だな。俺は三枚交換するぞ」
そろっている9のペアだけ残して、他を全て変える。
おそらくこれで楓には俺の手持ちがばれてしまっただろう。
最低ワンペアー以上あると……。
引いたカードは
♧J、♧10、♡10だった。
ツーペアか……。ただ楓が二枚しなかったところを見るともしかすると手札にスリーカードがあったのかもしれない。
そう考えるとここは降りるべきなきもしてきた。
今までの楓の幸運っぷりを考えるととてもじゃないが勝てる気がしない。
ただ、楓のカード次第では勝てるはずだ。
三枚残したのもフラッシュやストレートを狙ったのならまだわかる。
あとは楓がどうしてくるだろうか?
彼女の顔を見るとにっこりと微笑んでくる。
そして、彼女が言ってくる。
「私、降りますね」
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