激闘エスVSエム~後編~
「な、何がおかしいのよ!」
「ぷぷぷ……。だって、あんたなんてパンツ穿いているのよ。縞々のパンツなんて……。ひゃひゃひゃひゃ、もう駄目ぇ!」
腹を抱え地面をバンバン叩いて爆笑するサリィ。
「何を笑う!メイドに縞パンなんて基本中の基本じゃないか!しかも、カノンはご覧のとおりのぺったんこだから、こういう所でお色気の点数を稼がないと駄目なんだ」
僕もしっかりと確認した。さっきカノンがジャンプした折に見えたのは、水色のラインが入った縞々のパンツ、略して縞パンだった。カノンを変身させる時に意識したわけではないが、やはりメイドといえば縞パン。今回ばかりは己の才能を褒めてやりたい。
「そのとおりだ!」
「分かっていらっしゃる!」
「さっきは殴ろうとしてごめん、同志よ!」
僕の演説に感銘を受けたカメラ小僧達、いや同志達が口々に賞賛の言葉を口にし、惜しみのない拍手を送る。僕が手を振ってそれらに応えていると、轟音とともに僕の目の前でアスファルトが大きく陥没した。
「そうかそうか。あんたはそうやって人を馬鹿にして、いやらしいことばかり考えているのね」
クレータとなったアスファルトの中心には斬鉄モップが突き刺さっていった。クレータの底に下り、斬鉄モップを引き抜いたカノンが殺人鬼のような目で僕を見上げる。
「それは誤解だ。僕は何も馬鹿にしていない。寧ろ褒め称えているだけだ」
そうだ。僕はメイドと縞パンのタッグの良さを述べただけだ。
「胸のことを言った……。もう言わないって言ったのに……」
そんなことを言ったっけ?まったく覚えていない。
「それにパンツ見た……。へ、変態ぃぃ!」
斬鉄モップが飛んできた。運動神経のいい僕は紙一重で避けたが、その風圧で頬をわずかに切ってしまった。
「こ、殺す気かぁ!」
僕の頬を掠めた斬鉄モップは、そのまま勢い衰えず看板を突き破って何処かへ飛んでいった。飛行機とかに当たらなければ良いのだが。
「殺さないわよ。何度も何度も半殺しにして、生きてきたことを後悔させてあげる」
「おい!どうしてそうなる!?お前の敵はサリィだろ?」
「知ったことじゃないわよ!絶対に記憶がなくなるぐらい殴ってあげるから!」
まずい。カノンの奴は本気だ。パンツ見られた程度でそこまで怒ることなかろうに。
こうなれば、この場はサリィに助けを求めるしかない。しかし、笑いつかれたサリィは、薄笑いの表情を浮かべたままぐったりと仰向けに倒れていた。
やばい。本当にやばい状況だ。同志達はこの後の及んでもシャッターを切るのをやめない。くそっ、こいつらに助けを求めるのも無理だ。
「さぁ、覚悟はいいんでしょうね」
指をばきばき鳴らしながらクレーターから上がってくるカノン。お前は世紀末救世主か、と突っ込みを入れたかったが、恐怖に竦みあがった僕の口は滑らかに動かなかった。
頼む!誰でもいい!本当に助けてくれ!
僕の願いが通じたのか、ドンとクレーターの中心に稲妻が落ちた。何事とばかりにカノンが振り向く。
「ぐふふふふ……」
稲妻の落ちたことで舞い上がった砂埃が次第に薄れていく。低くめの渋い声が砂埃の中からする。
「この声は……」
カノンの顔が引き攣る。まるで僕のことを忘れたかのように、踵を返す。
「ちっ……。あの禿……」
サリィは覿面にいやな顔をする。
「おい!誰なんだ?」
「シュンスケ。下がってなさい。あれは、魔王デスターク・エビルフェイズよ」
気丈に言うかノン。しかし、心なしか声が震えていた。
「魔王だと?」
そんな馬鹿な!もう魔王の登場かよ。そういうラスボス的存在は、最後の最後に出てくるはずじゃないのか。
「とんだ茶番よ。余がすべからく終わらせようぞ」
砂埃が薄れていく。魔王デスターク・エビルフェイズがその姿を現さんとしていた。
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