第186話「鼓動の早く」
「Oh、のぼせちゃったんデスか? お顔が真っ赤デース!」
リリィの底抜けた明るい声にハッとして、慌ててその場から逃げ出そうとした。しかし勢い余ってひっくり返り、尻を強かにぶつける。
「い、てて……」
「服が透けてマース。かわいい水色」
「やめてくださいっ!」
怒るひかりにクスクスと笑い、リリィは髪をかき上げる。少し落ち着いてと宥められて床にぺしゃんと座り込むと静かに語りかけられた。
「どうするつもりデスか? そんなに急いでも、ハルに会えるか分からないノニ」
「高天原に行きます。方法は分かりませんけど……神様に聞きたいことがあって。きっとまだ隠されてることがある気がするんです」
「
「何がですか、もう」
リリィがゆっくりと霊湯から上がってきて、ひかりに顔を近づけた。頬に温かい手が当てられる。まだうっすらと残る腹の傷に目を奪われたひかりに優しく言葉をかける。
「今のヒカリは昔のリリィと一緒デース。大切な人を奪い取られて必死になってるデショ。とっても似てて、応援したくなりマース」
「ごめんなさい、わたし……」
「泣かないデ? この怪我はリリィ達が選んだ道の先にあったものデース、ヒカリは悪くないカラ、ね?」
「追いかけてもいいんでしょうか……。自分の都合で、ハルを。だってあの子の正体は」
唇にそっと華奢な指を当てられる。
「
鼓動がさっきから早いままだ。不安で仕方がない。しかしもうハルに会いたくて堪らなく、それを痛感する度に拍動の早まりを感じる。リリィがぐったりとしてきたので霊湯に戻した。
「リリィとの約束ネ。あいつらからあのレディーを取り返すマデ、絶対に諦めないコト。護りたいデショ、だったら行かなくちゃ」
「はいッ、ありがとうございます」
「ついでにこれも約束。再会したらキスしてネ」
「えぇッ!? そ、それは……」
「
リリィのせいで余計に心臓が動きを早くしてしまった。ほっと息をつくひかりにリリィは湯をかける。目を丸くした彼女にふと噴き出し、高らかに笑った。
「うぅ、ん……。シスター……?」
「
「……Yes?」
ジャスは寝ぼけているようだった。
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