兎月竜之介の隙あらば自分語り
兎月竜之介
第1回 難病と診断されたけど違った
初めまして。
あるいはいつも小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。
ライトノベル作家の兎月竜之介です。
最近はバーチャルアイドル『ときのそら』さんを主役にしたライトノベル『ときのそら バーチャルアイドルだけど応援してくれますか?』の本文執筆を担当させていただきました。
カクヨムではデビュー作『ニーナとうさぎと魔法の戦車』の続編や『王女様の高級尋問官』の番外編、SFでオカルトでエッチなライフワーク的百合小説『少女九龍城』を公開しています。
Twitterで感想をくださったり宣伝をRTやいいねをしてくださったみなさま、カクヨムやpixivで評価やレビューをくださったみなさま、兎月竜之介の新刊を読んでくださったみなさま、本当にいつもありがとうございます! この場を借りて、お礼を言わせていただきました。
さて、そんな兎月竜之介なのですが、今年の5月中旬に難病と診断されました。
結果的には全然違ったわけなのですが、個人的にはとても衝撃的な出来事だったので、こうしてエッセイ的な形で書き残しておきたいと思います。
×
体調の異変に気づいたのは4月の中頃でした。
トイレに行くと血が出る、ということが1週間ほど続いて「痔かな?」と思い、病院で見てもらうことにしました。
そのときは痔の薬(ボラギノールみたいなやつ)をもらって帰ってきたのですが、ゴールデンウィークが終わっても血が止まらずに再診。
同じ病院の別の医師に診てもらったところ、「痔じゃなさそうなので、内視鏡検査をしてみましょう」という話になりました。
内視鏡検査というのは、お尻の穴から胃カメラ(今回の場合は腸カメラ?)を入れるアレです。
事前準備の段階から不安だったのですが、病院から購入した事前食(おかゆとかシチューとか)はおいしかったですし、下剤はスポーツドリンクと同じ味(流石に2リットル近く飲むのは飽きましたが……)だったので問題なくクリア。
実際の内視鏡検査は、人によると全然痛くないらしいのですが、私の場合は結構苦しくて点滴&麻酔を打ってもらうことに……。
腸壁の細胞を採取して精密検査してもらうことも重なり、検査費はおよそ2万5000円とお財布事情的にも痛い結果になりました。
そんな内視鏡検査の診断結果は以下のようなものでした。
「潰瘍性大腸炎という難病です。完全な治療法は今のところありません」
この某総理大臣もかかっているらしい潰瘍性大腸炎という病気は、20代~30代の若者に発症する人が多いことが判明している病気です。
免疫系の暴走によって腸壁に炎症が起こるのですが、免疫が暴走する理由が判明しておらず、そのため完全な治療法も分かっていないとか……。
国から難病認定されており、しっかり申請すると補助金もいただけるそうです。
そんな『かかったら最後、一生付き合っていく病気』だったわけです。
ただし、私の場合は『超早期発見』&『超軽度』だったのが不幸中の幸いでした。
根本的な治療法こそ見つかっていませんが、病気の進行を抑える薬は開発されており、その効き目は同じ病気にかかった某総理大臣が元気に働けているほどです。
しかも、内視鏡検査で大腸の全てから小腸の入り口まで見てもらったのですが、炎症が起こっているのは直腸の部分だけ。
そのため、ちゃんと専用の薬を飲み続けていれば、炎症している部分からの出血も抑えられるし、食べ物や運動も制限されないし、健康な人とほとんど変わらない日常生活を送れると説明されました。
もちろん、今すぐに死ぬような病気ではないものの、将来的にはがんのリスクが高まるといった悪影響はあるわけなので、気を抜くことはできないのですが……。
ともあれ、私は整腸剤と潰瘍性大腸炎の進行を抑える専用の座薬を毎日欠かさず使いながら、精密な検査結果を待つことになりました。
×
5月末、精密な検査結果が判明して、状況が一転しました。
「腸壁の細胞からは潰瘍性大腸炎の反応が出ませんでした。あまりにも軽度すぎて反応が出なかった、という場合も考えられます。座薬を一旦ストップして、6月半ばに再検査を行いましょう」
担当医曰く、腸カメラで見た感じだと明らかに潰瘍性大腸炎なのに、検査結果はシロという摩訶不思議な状態になっていたそうです。
検査結果を聞きに行ったとき、直腸からの出血はすでに止まっていました。これは専用の座薬が効いているとしか考えられないわけで、なおのこと潰瘍性大腸炎の反応が出ないことが不可解でした。
そうして5月の中旬、私は1ヶ月ぶりの内視鏡検査を受けることになりました。
今回は炎症の起こっていた直腸部分を検査するだけだったので、全然痛くなかったですし、検査にかかった時間は30分くらい、検査費も7000円ほどに収まって精神的にもお財布的にも助かりました。
で、肝心な再検査の検査結果なのですが――
「炎症が完全に治ってますね。潰瘍性大腸炎ではなく、見た目と症状の似ているウィルス性の腸炎だったようです。精密な検査結果が判明するまでは、引き続き整腸剤を飲んでください。座薬はもう必要ありません」
ということでした。
どうやら、その道のプロである医師ですら惑わされてしまうほど、めちゃくちゃ紛らわしい見た目の腸炎だったようです。
そして今朝(6月28日)、再検査の精密な検査結果を聞いてきたのですが、やっぱり腸壁の細胞からは潰瘍性大腸炎の反応が見つかりませんでした。
こうして、2ヶ月近くにわたった検査の日々は終わりました。
×
結果的にはなんともなかったのですが、検査結果を待っている間は憂鬱でした。
「こうなったら闘病ブログを書くしかない!」と打算的なことを考えてみたり、「うちの家系はみんながんで死んでるから、がんのリスクが少し高まったくらいで問題なし!」と開き直ったりしてみたものの、どうしても「自分は治らない病気なんだ……」という意識が頭から離れませんでした。
担当編集者さんに話すかどうかも悩み、結局は話せませんでした。
絶対にそうはならないと思っていても、頭のどこかに「治療法の見つかっていない病気をかかえている体では仕事を続けさせてもらえないのではないか……」という思い込みがありました。
病気を隠して働く人や、重症になってから突然発表する人を世間では目にしますが、私もちょうどその人たちと同じ考え方になっていたのだと思います。
それでも精神的にヤバくならなかったのはいくつか理由があります。
症状がめちゃくちゃ軽かった。
家族や友人が話を聞いてくれた。
仕事に対する不安と比べてみたら、まあ、なんとか耐えられた。
(ちなみに仕事に対する不安でメンタルを崩したときは、食事が喉を通らなくなり、一日中なにをする気力も湧かず寝込んでばかりいましたが、そのときの話はいつか気が向いたときにでも……)
仕事の不安で耐性がついていたのはともかくとして、軽傷のうちに発見できたことと、自分一人で病気と向き合わなければいけない状況にならなかったのは、本当に幸運だったと思います。
その中でも病気の早期発見は、自分の力でなんとかすることができます。
私の場合、発端は「痔が長続きしてるなぁ……」という些細なものでした。
今回は症状がまぎらわしすぎるせいで、お医者さんたちも惑わされていましたが、胃腸に不安があるなら内視鏡検査は受けてみて損はないと思います。
「推しは推せるときに推せ」という言葉を最近ちょくちょく聞きます。
私は今回、それを自分の体で思い知ることになりました。
自分自身が無事ではないと推せるものも推せません。
まずはみなさんも、自分自身の健康を推していきましょう。
それから最近のラノベ作家界隈でも、長年の闘病の末、あるいは突然の病によって、仕事を離れたり命を落とされたりした方がちらほらいます。
もしも好きなラノベ作家さんがいらっしゃったら(できれば兎月竜之介のことも)、突然の病気で小説を書けなくなってしまったりする前に応援してあげてください。
×
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
私は小説以外の文章を書くことが苦手で、著作のあとがきを2ページ埋めるのにいつも苦労しますし、あとがきがボツになったこともあります。
そんな私がエッセイ(というほどでもない日記みたいなもの)を書くことにしたのは、文字通りの怪我の功名というやつで、これからも何かネタがあったら書いてみたいと思っています。
完全に放置しているブログの方よりは、面白いことを書けたらいいなぁ……。
それから最後に……兎月竜之介に小説を書かせるなら、健康体であることが証明された今しかない!
オリジナルも、ノベライズも、小説以外のお仕事でも、いつでもお待ちしております!
兎月竜之介の隙あらば自分語り 兎月竜之介 @usaginabe
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