薄明かり

 きっかけは学生時代のことだっただろうか

 徹夜をして

 窓の外が白んでいく光景を初めて見て

 軽い衝撃を受けたことを覚えている

 ああこの達成感

 この快感

 なんともいえないこの気持ち

 自分の知らぬ内に時間は流れて変わっていく

 その渦の中に自分はいる

 けれども加速していく時間に少し焦りもして

 言い知れぬ不安が胸中を埋める

 ああいかないで

 まだ薄暗いままでいて

 薄い青に染まった幻想的な時刻が好きだった

 静かでほんのりと肌寒く

 まだなにも始まっていない時間帯が

 それなのに時は進む

 太陽があたりを照らし街は活動を始める

 明るくなってしまう

 ああ嫌だ

 所詮は私も陰の者

 光の世界には慣れはしない

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