部屋の床に蟻が列をなす様を見ていると、急に自分が汚いものになったかのように、錯覚する。

 はい、そうです。私は醜い存在です。部屋もろくに片付けられない、ろくでなし。

 お菓子や食事をこぼして、そのままにしている。夏になるとそれを求めて蟻が寄ってくる。

 やけに机に蟻が昇ってくると思い下を見れば、この有様。

 思わず血の気が引いた。

 蟻の群がるその場所に、残酷にも水を投入。

 それから一つずつティッシュで回収。ゴミ箱に押し込んだ。

 危険物でも取り扱っているかのように、ドキドキした。

 その後も蟻は残っていたけれど、一夜明けると、影も形も消えていた。


 掃除しなければならないと常々思う。特に今日みたいな暑い日には。だけど、いつの間にやら忘れてしまう。

 その度に私は屈辱的な思いを抱えながら、床を磨くのだった。

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