昔は蛍がいっぱいいた。

 捕まえてはきゅうりなどを食わせた。

 だけど朝になるといなくなっている。


 蛍との別れ。

 都会へ行く。

 最近は見ていない。蛍という存在が遠くなっていく。誰もその単語を出さない。終いには忘れ去られたような気になってしまう。


 我慢ができなくて故郷へ向かう。そこには昔の光景が広がっていた。

 ただし、昔のような蛍の輝きはない。

 清流で有名なこの街にもいないのか。


 あきらめかけたとき、一匹の蛍が自分に近づく。

 それは同一個体ではないが、確かに懐かしい雰囲気がした。

 そうか、まだここに生きていたのか。そう思えただけでも満足した。

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