番外編
番外編1 その時、部屋で何があった?
※何話かに渡って、本編の合間に起きていた出来事や、描かれていないエピソードを綴っていきます。
〈『144話 魅惑の饅頭』にて、温泉饅頭を食べたアイルがサキュバスとしての能力を覚醒させてしまった際のエピソードです〉
配下のパワーアップアイテムと判明した温泉饅頭。
こいつはいい! と思った俺は、アイルにもそれを食べてもらったのだが……。
「はぁ……はぁ……はぁ……魔王様……私、もう我慢出来ません……」
彼女は顔を上気させ、俺の腰の上に馬乗りになっていた!
なんでこんな事になっているのかというと……。
饅頭を食べた途端、急に彼女の息が荒くなってきて、次の瞬間には腕を掴まれ、自室のベッドの上に投げ出されていたのだ。
饅頭の副産物なのか、魔王の俺を軽々と持ち上げるパワー。
今も物凄い力でベッドの上に押さえ付けられている。
完全にマウントを取られた状態だ。
それでも俺一応、魔王だし、やる気になれば撥ね除けられそうなんだけど……。
問題はとんでもない力と、とんでもない力のぶつかり合いになってしまい、周囲に被害を及ぼす可能性があるってことだ。
彼女にだって怪我を負わせてしまい兼ねない。
だから、あんまり無理は出来なかった。
そして、このとんでもパワーよりも問題なのが、彼女の精神状態だ。
恐らくこれは……サキュバスとしての淫欲に火が付いてしまったのだろう。
普段の彼女はサキュバスとは思えないくらい真面目で純朴な感じなのだが、饅頭が悪さをしてしまっているのか、今はサキュバスらしいサキュバスになってしまっていた。
「うふふ……もう、いいですよね? ちょっとだけですから……ええ、ホントにちょっとだけです……うふふ……」
箍が外れてきたのか、不気味な笑みすら浮かべ始めている。
「ちょっとだけって何!?」
「魔王様も意地悪ですね……分かっている癖に……うふふ……」
体がのし掛かり、温もりと柔らかさを感じる。
彼女の手が俺の襟元にかかり、着ている服をはだけさせて行く。
「ちょっ、ちょっと待て!」
「うぅ……焦らさないで下さい……」
アイルはまるで駄々っ子のように俺の上で体を左右に揺する。
「いいかい? 今のアイルは、俺があげた温泉饅頭のせいでおかしくなってるだけなんだ。君の本意での行動じゃないんだよ。そこの所を頭で理解していれば、ある程度は行動を制御出来ると思うんだけど……」
「なるほど、そういうことなんですね」
「おっ、上手くコントロール出来そうかい?」
「ええ、じゃあ仕方がありませんね」
そう言いながら、アイルは俺の服を脱がし始めた。
「って、なんでそうなるっ!?」
「だって、この気持ちは止められないんですもの……はぁはぁ……」
「とにかく、一旦離れて……落ち着いて話をしよう」
「ですが……申し訳ありません! 申し訳ありません! 申し訳ありません!」
「ちょっ!? 謝りながら脱がすなっ!」
「でも……このままでは私……気が変になってしまいそうなんです……」
「……」
アイルは体を火照らせながらも苦しそうな顔をしていた。
俺が安易に饅頭をあげたばっかりに大変な思いをさせてしまったな……。
このまま彼女の気が済むまま、好きにさせてやるのも手かもしれないが……特定の配下とだけ関係が深まり過ぎると統制に乱れが生じる可能性がある。
配下間の関係だって悪くなりかねない。
俺だって皆に平等に応対しているつもりでも、どこか無意識に情が移ってしまう可能性だって無きにしも非ず。
要するに贔屓はダメってことだ。
だから、この場はなんとかしなければいけないのだけれど……。
「お願いしまひゅ……はぁ……後生ですからぁ……」
アイルはとろんとした瞳で俺を見つめてきていた。
言葉もとろけたように覚束なくなってきている。
「そ、そう言われてもなあ……」
「じゃ……じゃあ……舐めるだけでいいですからぁ……」
な、舐めるだけ!?
なんか譲歩案みたいのが出始めた。
「舐めるだけって……どういうこと?」
「その言葉通り、ほんの少し舐めるだけですよ……はぁ」
彼女は艶めかしく舌舐めずりして見せる。
舐めるだけか……。
「本当に少しだけなんだな?」
「ええ、もちろんですぅ……頬の辺りを一舐めさせて頂ければ私は満足ですぅ……」
それで彼女が満足いくというのなら……それもアリか?
「よし……分かった。それで頼む……」
「……!」
告げた途端、アイルは瞠目した。
そして、喜びの感情が全身に行き渡ったように体を震わせる。
「ありがとうございますぅ! では、早速……」
彼女はすぐさま俺の体に覆い被さって来た。
そして耳の辺りに吐息を吹きかける。
次の瞬間、頬の辺りに温かいものが伝った。
これは完全に舐められてる! 俺は今、舐められてるぞぉぉっ!?
「さあ、これで満足したか……ん?」
約束通りの事が行われ、これで終わりかと思われた時だった。
どういう訳だか頬を舐められた時と同じ感触が首筋の辺りを伝う。
「ぬっ……ちょっ……何やってんだ!?」
「もうちょっとだけ……もうちょっとだけですから……」
「いやいや、ちょっととかいいながら、もう鎖骨の辺りまで舐め始めてんじゃねえかぁはうっ!?」
「あと少し、はぁはぁ……あと少しだけですから……はぁはぁ……」
「そこまで行くと……話が違って……おふっ!」
「はぁ……とてもいいです……おいひいですよ、魔王様……」
「だから、ちょっと待て……って! ぬぉ……」
いつの間にか、そこかしこで温かいものが這い始めていた。
「うふふ……魔王様……うふふ……魔王様……はぁ……魔王様……」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!」
――一時間後。
俺はベッドの上でぐったりとしていた。
皮膚という皮膚が湿っている気がする。
気がついた時には、全身の有りと有らゆる場所を舐め回されていたのだ。
なんだか……すごく疲れた気分だ……。
で、アイルはこれで満足したのかというと……。
部屋の隅で縮こまっていた。
膝を抱え、凄く真っ赤な顔で恥ずかしそうにしている。
それは普段の彼女の表情だった。
どうやら饅頭の効果が切れたっぽい。
「……アイル?」
心配になって声を掛けると、彼女は慌てたように床に手を突いて平伏した。
「も、ももももも申し訳ありませんっ!! 私としたことが……魔王様になんてことを! ここは命を持ってお詫びを!」
正気に戻ったアイルは激しく動揺していた。
「そんなことしなくていいよ。饅頭を食べさせたのは俺なんだし。寧ろ、そんなことで参謀がいなくなったら俺が困るんだからね?」
「魔王様……」
彼女はきょとんとした顔で俺を見上げる。
その瞳には僅かに涙が浮かんでいた。
そんな最中、俺はいそいそと身を整えだす。
そういえば俺……トイレに行くの我慢してたんだよね……。
直前でアイルに拉致されたから行けずじまいだった。
そろそろ行っとかないと、かなりヤバい感じ。
それにしても、こういう時に我慢するのはなかなか大変だったな……。
ん……我慢……?
そんなことを考えていると、ふと良いアイデアが浮かぶ。
これは何かに使えそうかも……。
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