第六部
第145話 ナニコレ
ぽちょん、ぽちょん、という水の音。
肌寒い空気。
魔法の明かりが辺りを幻想的に照らす中、独特な鼻をつくにおいが、僕らを取り巻いている。
「雨水には石灰岩という岩の一部を溶かす作用があります。それが大地の中の石灰岩を溶かし、このような洞窟をつくります」
ハモンド先生の声が何度も岩で反響している。
落ち武者のように頭頂が禿げて、側頭部の髪が無造作に伸びている男の先生で、二年生になってからあらたに関わることになった先生のひとりだ。
噂では、ミザル先生の三つ下らしい。
今日は『洞窟学』の授業で、学園からほど近いマリアナ洞窟に来ている。
コウモリ系の魔物が潜んでいるらしいが、事前掃討されているので、気になるのはその糞のにおいだけだ。
「大丈夫? ピョコ」
「は、はい……」
ピョコがフードを深めに被って、その顔を隠す。
ペア行動になっている彼女の顔が気のせいか青いのは、そのにおいのせいかも。
僕はこっそり、〈状態異常回復〉の魔法をそんなピョコにかける。
まあ、これだけコウモリのにおいがすれば、厄介な魔物は居ないと踏んでだいたい間違っていないんだけどね。
「なんか、急に食欲がわいてきましたっ!」
「よかったねー」
ピョコが急成長した話は聞いたかな。
アリザベール湿地に同行したせいで大量の魔物討伐の経験値が入り、恐ろしいまでのスキルポイントが貯まったらしい。
【旅商人】としてのスキルが伸びたおかげで、とんでもない量のアイテム保持が可能になったんだ。
風呂を持ち歩けるとか、もともとすごいアイテムボックスだったのに、さらに拡張したというからビビる。
もちろんステータスが伸びたせいで、戦闘もなんなくこなせるようになっている。
今のピョコ、ゴブリンとかまとめて屠るからね。
想像しづらいけど。
そうそうスキルポイントといえば、僕もそこそこ手に入った。
「時の旅」に入った際に魔界で行動を共にし、相応に魔物を倒し、魔王討伐にも関わったからね。
僕自身はなんと、すでに魔王討伐3度目なんだけど。
アーリィを救った救出の報酬30ポイントも合わせ、合計46ポイントだ。
あぁ、アーリィというのは、アリアドネのことね。
呼びやすいからこうなった。
「雨水は土壌の中でさらに強い溶解力を持つことになります。これはひとえに土の圧力がかかるからです。ですが、これほどの洞窟を形成するとなると、万単位の年月が必要と言われています」
へぇぇ、と生徒たちが周りを見回しながら、感嘆している。
授業中だけど、知っている話ばかりだから、今のうちにスキルツリーを伸ばしちゃおうかな。
現在のスキルツリーを示しておこう。
【生命力】
【身体強化(壱)】 1ポイントアンロック
【筋力+10%】1 (MAX1)
【生命力+10%】1 (MAX1)
【敏捷+10%】1 (MAX1)
【魔力+10%】1 (MAX1)
【防御力+10%】1 (MAX1)
【盾防御+10%】1 (MAX1)
【身体強化(弐)】 2ポイントアンロック
【キャンセル】1 (MAX1)
【身体強化(参)】 3ポイントアンロック
【筋力+100%】1 (MAX1)
【生命力+100%】1 (MAX1)
【敏捷+100%】1 (MAX1)
【魔力+100%】1 (MAX1)
【防御力+100%】1 (MAX1)
【盾防御+100%】1 (MAX1)
【魔力】
【悪魔言語詠唱】10 (MAX10)
【詠唱短縮】10 (MAX10)
【上位元素適性】
【光】5 (MAX10)
【闇】5 (MAX10)
【混沌】5 (MAX10)
【即死】0 (MAX10)
【憤怒の石板】 3ポイントアンロック
【悪魔の追撃】1 (MAX1)
【悪魔の追撃2】1 (MAX1)
【回復追撃】1 (MAX1)
【筋力】
【凶人化】
【凶酔の剣】0 (MAX3)
【超越攻撃】
【斬鉄】0 (MAX3)
【粉砕】3 (MAX3)
【敏捷性】
【二段ジャンプ】0 (MAX3)
【残像】3 (MAX3)
【縮地】3 (MAX3)
【精神力】
【魅力】6 (MAX10)
【王者のカリスマ】0 (MAX10)
【上位属性耐性】
【聖】8 (MAX10)
【光】8 (MAX10)
【闇】8 (MAX10)
【混沌】8 (MAX10)
【即死】8 (MAX10)
【身体感覚】
【感覚】
【視覚】9 (MAX10)
【聴覚】9 (MAX10)
【嗅覚】9 (MAX10)
【味覚】2 (MAX10)
【触覚】3 (MAX10)
【第六感】5 (MAX10)
【第七感】5 (MAX10)
【知性】
【総合知性】90 (MAX100)
【言語知性】
【言語理解】10 (MAX10)
【言語出力】10 (MAX10)
【記憶力】7 (MAX10)
【異種族言語理解】
【天使言語】0 (MAX10)
【悪魔言語】10 (MAX10)
【特殊】 1ポイントアンロック
【変幻】
【カラス化】0 (MAX3)
【異人化】3 (MAX3)
【不死者化】0 (MAX3)
【煙幕】1 (MAX1)
【過去への訪問】 一度のみ
【配下作成】
【魔の従者】5 (MAX10)
【不死の従者】0 (MAX10)
【生命力】ツリーはMAXまで振ったのでこれ以上は伸びないようだ。
【即死】属性はとりたくないし、【カラス化】や【不死者化】も遠慮しよう。
【天使言語】もなくていいや。
残っているところで、だいたい取りたいところは決まっているので、こう振ってみた。
【生命力】
(略)
【魔力】
【悪魔言語詠唱】10 (MAX10)
【詠唱短縮】10 (MAX10)
【上位元素適性】
【光】5 (MAX10)
【闇】8 (MAX10)
【混沌】8 (MAX10)
【即死】0 (MAX10)
【憤怒の石板】 3ポイントアンロック
【悪魔の追撃】1 (MAX1)
【悪魔の追撃2】1 (MAX1)
【回復追撃】1 (MAX1)
【筋力】
【凶人化】
【凶酔の剣】3 (MAX3)
【超越攻撃】
【斬鉄】3 (MAX3)
【粉砕】3 (MAX3)
【敏捷性】
【二段ジャンプ】3 (MAX3)
【残像】3 (MAX3)
【縮地】3 (MAX3)
【精神力】
【魅力】8 (MAX10)
【王者のカリスマ】5 (MAX10)
【上位属性耐性】
【聖】10 (MAX10)
【光】10 (MAX10)
【闇】10 (MAX10)
【混沌】10 (MAX10)
【即死】10 (MAX10)
【身体感覚】
【感覚】
【視覚】9 (MAX10)
【聴覚】9 (MAX10)
【嗅覚】9 (MAX10)
【味覚】5 (MAX10)
【触覚】5 (MAX10)
【第六感】7 (MAX10)
【第七感】7 (MAX10)
【知性】
【総合知性】90 (MAX100)
【言語知性】
【言語理解】10 (MAX10)
【言語出力】10 (MAX10)
【記憶力】7 (MAX10)
【異種族言語理解】
【天使言語】0 (MAX10)
【悪魔言語】10 (MAX10)
【特殊】 1ポイントアンロック
【変幻】
【カラス化】0 (MAX3)
【異人化】3 (MAX3)
【不死者化】0 (MAX3)
【煙幕】1 (MAX1)
【過去への訪問】 一度のみ
【配下作成】
【魔の従者】10 (MAX10)
【不死の従者】0 (MAX10)
【上位元素適性】で【闇】と【混沌】を伸ばし、謎の【凶酔の剣】と【斬鉄】、【二段ジャンプ】を取った。
あとは魅力とカリスマを伸ばし、【上位属性耐性】はMAXまで振った。
【味覚】と【触覚】を5にして、【第六感】、【第七感】を7にした。
最後に【魔の従者】を10にして残りポイントがゼロになった。
よし、これでいいや。
あー、やっと【斬鉄】取れたな。
どこかで役立つ場面あるかなぁ。
〈〈
〈【アイテムボックス拡張Lv5】を覚えました〉
〈【アイテムボックス内時間遅延Lv5】を覚えました〉
今回は振ったポイントが少なかったから、これだけみたいだな。
などと、考えていた折。
《第三スキルツリーのコンプリート条件が満たされました。
「……は?」
僕は素っ頓狂な声を上げていた。
「どうしたんですか、サクヤさん?」
隣にちょこんと立っているピョコが、フードの奥から不思議そうな顔をして僕を見上げている。
「あ、いや、なんでもない」
僕は軽く咳払いして、乱した空気をとりなす。
な、なんだこのアナウンス。
第三スキルツリーだと……?
さらに転職なんてできるのか。
〈さっさと決めなさいよ。あと5秒〉
「す……する、しますって!」
うわ、出たよ。
くそ、またいろいろ考える前に決めちゃったじゃないか。
〈じゃあ新しいスキルツリー送っとくから〉
もう準備できてんのかよ。
今回は絶対、転職するって決めつけてたな。
「つーか、『???』じゃわかんないんだけど」
〈こっちだってわかんないわよ〉
「………」
なんだよそれ。
ていうか、神なのになにかリリスと同じような喋り方、気になるな。
◇◇◇
その日の放課後に、新しいスキルツリーが届いていた。
わくわくしながら開いてみたが、盛り上がっていた気持ちは早々に萎えた。
見てくれ、こんな感じだ。
【生命力】
【???】
【???】
【???】
【魔力】
【???】
【???】
【???】
【筋力】
【???】
【???】
【???】
【敏捷性】
【???】
【???】
【???】
【精神力】
【???】
【???】
【???】
【特殊】
【???】
【???】
【???】
【???】
【???】
【???】
……なんですか、これは。
どうやったら【???】が明らかになるのかも不明だ。
なにか解除条件を満たす必要があるのかな。
職業が決まったらオープンするのかな。
第三スキルツリーだから、そうかんたんに伸びないようになっているのかも。
まあいいか。
現状、なんら困っているわけでもないし。
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