第71話 森の調査と廃村


「そういう事じゃな·····じゃから今回は·····」

「それじゃ、俺が調査してきてやるよ」


俺はランディの言葉を遮るように言った

ランディとエルさんが口を開けて固まっている

この光景を見るのも久しぶりだ


「ワシの話を聞いておったか?オーガは高ランク冒険者でも、少人数討伐を避ける魔物じゃ!ジンが強いのは分かっておるが、態々森を抜ける必要はないじゃろ?」


「だから、飽くまで、調査しに行くだけだ、オーガと無駄に戦うつもりはない」


「ジンが高い索敵能力を持っていることは、ギルドの情報で分かっておるが、しかしな·····」


「俺はあの森で目を覚まして、この町まで来たんだ

何か俺の事が分かるかもしれないだろ?」


ランディを騙すようで申し訳ないが、ある意味本当のことだ


「この町に来る前に、あの森におったのか·····記憶を探すのが2人の目的だったな·····ワシが止めてもジンは行くじゃろつしのぅ」


「しかし!マスター!」


「エルの気持ちも分かる、2人は素晴らしい人材じゃ·····しかしな、冒険者である以上、何者にも縛られず自由であるべきなんじゃ」


「ですが·····」


エルさんは納得がいってない様で、下を向いて黙ってしまった

空気が少し暗い·····俺が戻らないと思っているんだろう

それほどまでに、西の森は危険な場所ということだ


「エルさん、俺達は誰も攻略できなかったダンジョンを2箇所も攻略してるんだ、ダンジョンもかなり危険な場所だったが、俺はちゃんと戻ってきただろ?」


「ジンさん·····」


涙目のエルさんと目が合った

目が潤んで、顔が少し赤く染まっている



「ダンジョンで、ロックドラゴンとフレイムドラゴンを1人で倒しちゃうぐらいだもんね·····」


「「えっ!?」」


リオが言ったとたん、エルさんとランディが固まった

さっきまでの、暗く重たい空気も、一瞬で無くなってしまったようだ


「ほ、本当なのか!?あのドラゴンを1人で倒したのか?」


「あぁ·····俺達の防具はドラゴンの素材で出来ている、シェリーさんに頼んで、今朝出来た防具だ」


「ジンの実力がそれほどとは·····オークの大群を倒した話は聞いておったが、その時よりも成長しておるようだな」


「なんだか、ジンさんなら、西の森を抜けることも簡単な気がしてきました·····」


2人が俺を、期待の眼差しで見てくる

オーガを全滅させてくると思われていそうだ·····


「とりあえず、西の森に入る許可は貰えたってことだな?」


「そうじゃな、いつでも入っていいぞ!」


「それじゃ、入る前にオーガについての資料を見せてもらえるか?どんな魔物なのか、見たこともないからな」


「それじゃ、直ぐに持ってきますね!」


エルさんが資料を取りに部屋を出ていった



俺達がギルドから出ると、太陽は高く上がっていた


「昼過ぎぐらいか、西の森に入るのは明日の朝からにするか!」


『ぐぅ〜』

リオがお腹で返事をしてきた


「お腹空いたー」


「飯にするか·····異空間で俺が作ってやるよ」


「やったー!やっぱりジンくんのご飯が一番美味しいんだよね!」


俺達は異空間に移動して、昼飯を食べた

その後は、シロと戦闘訓練をしたり、魔素の修行をしたりして、過ごした




次の日の早朝、俺達はカタクの西門の外に居た

魔導二輪に跨り、エンジンをかける


「それじゃ、西の森に行くか!」


「うん!」


俺達は、西の森を目指して魔導二輪を走らせた



「あそこが、西の森?」


「そうだ」


数分で森まで着いた、森の中は木々が生い茂っていて魔導二輪で進める道にはなっていない

俺達は魔導二輪を降りて、森の中へ入って行った


「方角はこのまま、真っ直ぐに進んで、森を抜けた先がウリタカント王国だな」


「やっぱり、この森ってすごい広いの?」


「そうだな、マップでは端まで表示されていないからな、ダンジョンの森の方が広いと思うけどな」


異空間にいつでも行ける分、ダンジョンに比べれば、かなり楽をできる

俺達はどんどん、森の奥へ入って行った

途中でマップに表示された魔物を確認しながら進んだが、ホーンラビットばかりだった

リオが食料として倒していた



「ん?ここから、魔素が濃いな·····」


数時間ほど森を進んだところで、魔素濃度が一気に変わった

まるで、周りの魔素を1箇所に集めているみたいだ


「なんだか、周りの景色もちょっと変わったね·····」


言われて周りを見渡してみると、魔素が濃い場所のセグの木は葉が枯れて枝が折れたり、酷いものでは根元から倒れてしまっているものまであった


「ん?」


「どうしたの?」


「もう少し進んでみないと分からないが、誰か住んでるかもしれない」


「この森の中で!?」


マップの端に木がない場所があり、建物らしき物が、表示されている


「とりあえず、もう少し近づいてみるか」


500m程走って近づいてみる


「あれは村みたいだな·····しかも魔物が住んでいるみたいだ」


「魔物が村を作ったってこと!?」


「実際に見て見ないと、わからないな·····」


マップには木が生えていない、広場があり、10数軒の家が表示されている

そこには、人のマーカーはなく、魔物のマーカーだけが動いてた

近くには他に魔物のマーカーは表示されておらず、その場所を避けるように、離れた場所に数匹表示されているぐらいだ

俺達は、目視できる場所まで近づいてみることにした



近づいてみると·····


そこは廃村だった

元々人間が作った村が、いつからか魔物が住む村に変わってしまったんだろう

家は何軒か崩れてしまっている

崩れていない家も、壁に穴が空いていたり、屋根が無くなっていたりして、人間が住める環境ではない


「あれが、ここに住んでる魔物?あれって·····」


「オーガだな、かなりの数いるな·····」


廃村に住んでいるのは、この森の悪魔と言われている、オーガだった

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