第54話 新型魔導二輪
「ジンさん!待ってましたよ!」
俺達が造船所に着くと、ティムさんが待っていた
「こんな朝早くから待たせてしまって、すみません」
「いえいえ、私が勝手に待ってただけですから、それより、完成したので是非確認してください」
そう言って、ティムさんの後ろから魔道二輪が出てきた
「見た感じ、前と同じじゃない?何か変わったの?」
魔道二輪をみたリオが言う通り、見た目は何も変わっていない
「今は陸を走る
「まずは、向こうに持って行って試して見てください」
ティムさんに言われて、魔道二輪を海に続くスロープまで持ってきた
「ここ海だよ?ここで何を試すの?」
「まぁ、見ててくれ」
そう言って、俺は魔道二輪を海の近くまで持っていき、跨って魔力を込めて、エンジンをかける
「そこのボタンを押してくれれば変形します」
ティムさんに言われて、タコメーターの近くを見ると、ボタンがあったので、押す
すると·····タイヤが内部に収納されて、代わりに魔道二輪の下が、船の底部分の様な外装になった
「このまま浮かべて大丈夫ですか?」
「はい、それで完成形なので、浮かべてみてください」
俺は魔力を込めて、少し浮かべながら、海にゆっくりと着水する
海に浮く姿は、完全にジェットスキーだ
「浮きましたね·····ちょっと試運転してもいいですか?」
「もちろんです!」
俺はしばらく、試運転を楽しんだ
日本ではジェットスキーの免許なんて持っていなかったが、魔力で動く魔道二輪ならそんなことは関係なく、思い通りに動かすことができた
魔道二輪と同じで、ハンドルを持っておく必要がない
スピードも魔導船よりも速く、小型なので燃費がいい
魔導船に比べて、風をもろに受けるが、リオの
魔道二輪同様に少し浮いてるので、タコメーターが100kmを超えても水の抵抗が無かった
「ティムさん!完璧です!」
陸に上がった俺は、魔道二輪を陸走タイプに変形させながら言った
「期待にお応えできてよかったです!ちなみに、今回はタンクも少し改良させて頂きました
タンクの研究が進み、小型でも容量が1.5倍になりましたので、新しい物をつけさせて頂いてます」
「助かります!ありがとうございます
これはお礼なので、受け取ってください」
そう言ってティムさんに金貨を3枚手渡した
「いつもありがとうございます!ジンさんのお陰でうちの会社は右肩上がりです!また、近くにこられた際には寄ってくださいね」
「もちろんです。今度来た時は、魔道具をゆっくり見たいですね」
「改良を重ねて、素晴らしい魔道具を作っておきます」
俺達はティムさんに別れを告げて、王都に向かうためにイエンの門まで来た
「ジン!何も言わずに行くのかよ」
「来てるのが分かってたから、宿まで行かなかっただけだ」
レン達が見送りに来てくれていた
「ジン達が南のダンジョンを探してる間に、北のダンジョンを攻略して直ぐに追いついてやるからな!」
「あぁ!俺達は待つつもりはないからな、追いつけるもんなら追いついてみろ!」
俺達は硬く握手を交わした
俺は魔道二輪をアイテムボックスから取り出し、跨ってエンジンかける
リオが俺の後ろに乗ったのを確認して、レンの方を向くと
「何でそんなもん持ってんだよ!ズル過ぎないか!?」
「これは日本から持ってきたバイクを改造したものだからな·····まぁ俺の持ち物だからズルではないと思うぞ?じゃ!またな!」
文句を言っているレンを置いて、俺達は王都に向かった
「王都に着いたらギルドで、ダンジョンについて確認してみるか」
「そだね·····」
今出発した所なのに、リオがもうウトウトしている
王都までは馬車で1日、魔道二輪なら2時間もかからずつく距離だ
王都に着くまでに、何台かの馬車とすれ違った
全ての馬車が荷馬車で、かなりの数の冒険者が護衛をしているみたいだった
港町イエンもダンジョンの町ノースもこれから、人がどんどん増えるのだろう
すれ違う人達が、俺たちを見て驚いていたが全員スルーした
冒険者が数人、武器を構えていたのが見えたので、魔物と間違われたのかもしれない·····
程なくして、俺達は王都の近くまで来たので、魔道二輪をアイテムボックスに収納して、歩いていくことにした
王都の門は前回のように、長蛇の列が出来ていることはなく、門番が門の前に、槍を片手に立っていた
俺達がギルドカードを見せると敬礼をして、中に通してくれた
「王都は相変わらず、人が多いな」
「そうだね·····前よりかは少ないけど·····冒険者が多くなったのかな?」
「武術大会が終わって商人が減って、冒険者達が遠征から帰ってきたんだろうな」
雑談していると、冒険者ギルドに着いたので、中に入る
冒険者ギルド内はチラホラと冒険者がいるが、殆どは出払った後なのか、職員達が嵐のあとの片づけをしていた
俺達は適当に受付を選んで声をかけた
「ちょっと聞きたいんだが、南のダンジョンについて情報が入っていれば教えて欲しい」
そう言ってギルドカードを提示する
「はい、ダンジョンについてですね·····ダンジョンはここから北東にある港町イエンから船に乗って向かうのが」
「いや、北のダンジョンじゃなくて、南のダンジョンを教えて欲しいんだが·····」
受付嬢が北のダンジョンの場所と行き方を説明し始めたので、話を止めて訂正した
「南のダンジョンですか?あちらは北のダンジョンを攻略した人が向かう事になるダンジョンらしいので、北のダンジョンを攻略せずに向かっても意味がありませんよ?」
まぁ·····昨日、北のダンジョンが攻略されたと情報が入っていても、誰が攻略したかまでは把握出来ていないのだろう
それに、攻略者が1日で王都に来ているなんて、尚更思わないだろう
規定ルートでも7日はかかるとされている距離だから仕方ない
「それでいいんだ、南のダンジョンの場所が分かっていれば教えて欲しい、明確な場所じゃなくても予測地点でも構わないが·····」
「向かわれても無駄なんですよ?ダンジョンはまだ見つかっていませんが、地揺れの激しかった場所から特定すると、南方にある大陸が怪しいかと思われます。
今は最寄りのギルドから調査隊が向かっているはずなので、1ヶ月ほど待っていただけたら、正確な情報をお渡しできるかと思われますので、その間に北のダンジョンに向かわれては如何でしょうか?」
「なるほどな、南方の大陸までは、どれぐらいの距離があるんだ?」
「王都より南東にある港町までは、馬車で3日、港町から南方の大陸までは海を渡るルートでしたら10日前後です。ちなみに陸伝いに向かう方法もありますが、馬車で3ヶ月は掛かるかと思われます」
「結構遠いんだな、ありがと、助かったよ」
俺は受付嬢に礼を言ってギルドを出た
受付嬢が『
俺達は王都から出て、門番から見えないぐらいまで離れて魔道二輪を取り出した
「よし、また魔道二輪で移動だな」
俺が魔道二輪に跨ると、リオが後に座った
「南東にある港町まではどれぐらいで着くの?」
「多分、6時間もかからないと思うぞ
何事もなければ昼を過ぎたぐらいには着けそうだな」
「それじゃ、お昼ご飯はまた、魚料理が食べれるのね」
リオが後ろで嬉しそうにしている
イエンで魚料理が好きになったようだ
「次はどんな魚料理があるんだろうな」
俺達は、南東の港町コエンに向かうことにした
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