第26話 Bランク昇格


町に入った俺達はギルドに直行した



ギルドに入ると、まだ混雑前だったようでチラホラと冒険者が受付に並んでいる程度だった

エルさんの列に並ぶと、直ぐに俺達の番になった


「エルさん、今盗賊討伐から戻ったんだが、ややこしい報告があるから、またマスターと話せないか?」


「ジンさん、おかえりなさい。かなり早いお戻りですね·····それに後ろの女性2人は·····」


エルさんがジト目で俺を見ている·····

美人のジト目もいいもんだが、今は報告が先だ


「マスターに話す時に2人のことも話すから、呼んでもらってもいいか?」


「そうですか·····わかりました。直ぐに呼んでくるので応接室に案内しますね」


そう言って職員にマスターを呼びに行くように伝えて、応接室に案内してくれた


応接室で俺とリオがソファに座って寛いでいると、直ぐにマスターのランディが入ってきた

ちなみに2人は後ろに立っている


「ジンよ·····また何か問題事か?·····盗賊依頼の報告と聞いたが、まさか、あの盗賊団のアジトをたった1日で見つけ出したではあるまいな」


「ちゃんと見つけて殲滅してきたぞ?色々話さないといけないことがあるんだが、先に2人を紹介しておくよ」


ランディがなにか言いたそうにしているが、気にせず話を進める


「イスタの町長の娘のリリィと俺達が殲滅した盗賊団の頭のステアだ」


「「!?」」


俺が2人を紹介すると、ランディとエルさんが固まってしまった


「なんでイスタの町長の娘がジンと一緒におるんじゃ!それにその女は盗賊の頭じゃと!?」


ランディの声が部屋中に響いた·····


「とりあえず、順を追って説明するから·····」


そう言ってこれまでの事をランディとエルさんに説明した

アジトを見つけた方法をしつこく聞かれたが、秘密ということにしておいた



「ふむ·····そう言うことか·····それならまずは盗賊の処理からじゃの、倒した盗賊の死体はまた闘技場にでも出しといてくれ、明日の朝に報酬を渡せるようにするからの·····」


ランディとエルさんが遠い目をしている


「わかった、それじゃ後で闘技場に出しておく」


「して、ステアのことじゃが·····エル、ステアの情報はあるかの?」


「それが·····初めて聞く名前でして·····ギルドに保管されている盗賊名簿にも記載がありませんでした·····」


「ステアは盗賊なのにギルドの情報から漏れているのか?」


「あたしは盗賊だけど、盗みや人殺しはやったことがないよ?子供の頃に盗賊に拾われて育てられただけだ、頭には強さだけで選ばれたからね」


「やはりそうじゃったか·····しかし犯罪歴はないにせよ、盗賊と何年も共におったんじゃ、一般常識が欠けておる可能性があるからの、1年は監視を付けることになるぞ」


「1年で自由になれるのか!それならすぐに兄貴と旅ができそうだ!」


「俺達はもうすぐ町を出るがな·····まぁ自由になったら俺達を追いかけてくればいい」


追いつけるかどうかは知らないが·····



「監視を付けるという意味でも、ギルドで働いてみんか?頭になれるほどの力量であれば試験管になれるかもしれんからの」


「おう!戦うのは得意だ!住む所もないから願ってもないことだな!」


「ステアのことはこれから教育するとして·····リリィのことじゃが·····」


「私もギルドで働かせてください!」


リリィがランディの話に割り込んで、主張してきた


「·····そうじゃの、受付嬢としてエルの元で働きなさい、じゃが親にはワシから連絡を入れとくでの·····イスタの町長とは古い付き合いなんじゃ·····」


リリィが胸を撫で下ろしている

近くの町なだけあって、上層部では付き合いが少なくないらしい


「2人には今晩からしっかり働いてもらうからの!もうすぐ忙しくなる時間じゃ、エルはリリィを着替えさせて受付の仕事を手伝わせるのじゃ!

ステアには盗賊の確認作業を手伝って貰うぞ!お前なら全員の名前がわかるじゃろ!闘技場にワシらと向かうぞ」


ランディの言う通りに全員が動く

リリィはステアと離れるのが嫌だったらしいが渋々、エルさんに連れていかれた




闘技場に着いた俺達は、毒死した盗賊達を並べていた

ちなみに盗賊達は俺のアイテムボックスに移動済みだ

ゲートや異空間は秘密にしている

念の為、リリィとステアにも秘密にするように伝えている


並べ終えた後は、ステアが順番に盗賊を確認し、名前を書類に記載していく

仲間を殺されて、俺に恨みは無いのか聞いたが


「深い付き合いの奴はいなかったからな!あたしを育てた親は捕まって処刑されちまったしな」


だ、そうだ·····

盗賊の世界もかなりシビアなのかもしれないな



そんなことを考えていると、ランディから声をかけられた


「よし!後はワシらの仕事じゃ!また明日の朝にギルドに来てくれるか?報酬を用意しておくからの」


「あぁ、わかった」




ギルドを出た俺達は街で必要なものの買い物を済ませて、宿に戻って飯を食った

宿代はまだ2週間分ほど払っているので、できる限り泊まるようにしている

ちなみに、買い物ついでにベットを買った

バレないようにアイテムボックスに入れるのは大変だった·····


異空間に移動し、ベットを置いてそれぞれ、風呂に入った


「今日からはベットが2つあるから、町にいる間は別々に寝れるな」


「そうね·····」


「異空間にある新しいベットはリオが使ってくれていいぞ、俺は宿で寝てるから、起きたら宿に出てきてくれ」


「わかったわ·····」


リオが寂しそうにゲートに入っていった





朝、目が覚めると


「え?なんでだ·····?」


隣にリオが寝ていた

困惑したが、とりあえず着替えることにした

着替えていると、リオが起きた


「おはよ·····」


「おはよう、何で俺のベットにいたんだ?」


気になったので、一応聞いてみる


「ずっと2人で寝てたから·····寂しくて·····つい·····」


「そうか·····言ってくれれば初めからそうしたんだけどな·····とりあえずギルドに向かうから準備してくれ·····」


朝からちょっと気まずくなりながらも、ギルドに向かった



ギルドに入ると、みんな忙しそうにしていた

とりあえず人数の少ない受付の列に並んで順番を待つことにした

しばらくして、俺たちの番になった


「おはよう、昨日の報酬を受け取りに来たんだけど、今大丈夫かな?」


そう言って、ギルドカードを見せる


「あ!ジンさんですね!大丈夫ですよ、手の空いてる者に案内させますね!」


そう言って、受付嬢がベルを鳴らすと、奥から職員が出てきて案内してくれた


『コン、コン、コン』

「ジン様をお連れしました。」


「わかった、入いれ」


中からランディの声が聞こえて、職員がドアを開ける


「ジン様、こちらにどうぞ」


そう言って、ソファに案内してくれた

どうでもいいことだが、受付嬢はみんな、ある程度フランクに接してくれるが、ギルド職員はBランク以上の冒険者に様付けで対応してくる



ソファに座っていると、職員が奥から飲み物を持ってきてくれたところで、ランディが向いのソファに座った


「朝から態々すまんの、これが、昨日の報酬じゃ!」


そう言ってテーブルに金貨が入った袋を3つ置いた


「かなり有名な盗賊達が集まっておったからの、今回はかなり報酬が多いぞ!」


「あぁ、ありがと。正直、金には困ってないんだがな·····」


報酬を受け取りながら呟いた


「あと、これはリオにじゃ!」


テーブルに銀色のカードが置かれた


「Bランク昇格おめでとう!最速はジンに取られてしまったが、リオは3に早い記録じゃ!」


「3番なのか?ってきり俺の次だと思ってたんだが」


「それがのう、ジンがBランクになった次の日にBランクになった奴が王都におっての、そやつは登録後17日目じゃったからジンより3日遅いことになるのう、それでもかなり早いがな!」


ちなみにリオは18日だ


「まぁ、スピードなんて関係ないだろ!そんなことより、リオ、Bランクおめでとう!」


「うん!ありがと!」


リオが笑顔で答えた



「それで、マスター少し相談があるんだが、剣術の修行をつけてくれる人とかいないか?」


「剣術か?ジンの実力なら別に修行せずとも十分じゃろ?」


「いや、俺の剣術はまだまだだ、俺はこいつの性能のおかげでレクスに勝てたようなもんだ、だから剣術の基礎を教えてくれる人を探してる」


そう言いながら、ブラッドチェーンを見せる


「ふむ·····それじゃとまたレクスを呼ぶか?あやつはジンに負けてから、また修行漬けの毎日らしいからの、ジンと戦えると話せば飛んでくると思うぞ?」


「レクスか·····マスターは相手をしてくれないのか?」


レクスでも問題ないんだが、鑑定で見ると、マスターの剣術スキルはLv.8だ

かなりの実力者なのだろう、レクスがこの前Lv.7だったがここまで来るとLv.1の差はかなりでかいはずだ


「ワシは老いたからの·····あまり長時間の戦闘訓練はできないんじゃ·····また機会があれば1戦だけ相手をしてやるぞ」


ランディが少し寂しそうに言った

いくら剣豪でも歳には適わないのだろう·····


「そうか·····レクスが俺より実力は上なのに変わりない、相手をしてもらえるか聞いてもらっていいか?」


「わかった、1時間程したら闘技場に来い、レクスは呼べばすぐ来るじゃろうからな」


「あぁ、よろしく頼む」


そう言って、部屋から出て、ギルドのホールへ戻る


「1時間あるし、飯でも食うか?」


「そうだね、朝ごはん食べて、身体強化のレベル上げないと、レクスに負けちゃうかもだしね!」


リオがニヤニヤして言ってきた

俺達の飯はスキルの底上げに繋がるので、力を増強させるという意味では間違っていないんだが·····


「リオは飯食ったら闘技場で俺と一戦な」


「え·····いや·····ぇ、ちょっ·····」


ちょっとお仕置きしないとな·····


ギルド内にある飯屋で朝食を済ませた後、30分ほどしか経っていないが、嫌がるリオを連れて闘技場に来た

使用許可はエルさんに言って、取っているので問題ない


「ほ、本当に戦うの!?私が負けるのわかりきってるよー!」


リオが涙目で訴えてくる


「まぁ手加減はしてやるから、安心しろ 折角作った防具がボロボロにならないように頑張れよ!」


「うぅ·····わかったよ·····本気でいくからね!」


リオの目付きが鋭くなった

すると小さめの雷球が3つ空中に浮かんだ

どうやら、覚悟を決めたようだ


俺は闇魔法と光魔法で作った剣を2本ずつ、合計4本浮かべてリオに向き合う


「いつでもかかってこい!」




勝負は俺の圧勝だった

だが、リオはかなり成長しているようで、俺がちょっと本気を出さないとやばい場面が、多々あった

やっぱり、空間制御と雷球はチートだな

雷球·····電気の弱点を知っていないと対応にかなり苦戦するはずだ


リオはと言うと、俺の剣戟を受けて完全にノックダウンしている

防具も色々破けてしまったみたいだが、ダメージ加工みたいに見えるので、別に置いといてもいいんじゃないだろうか·····わざと斬ったわけじゃない·····いや、本当に·····


「おーい、リオ、大丈夫か?」


俺の全属性魔法のオンパレードはかなり効いたらしく、気絶して動かないので、抱えて闘技場の観戦席に寝かせておくことにした



「じゃあ、レクス!俺の剣術修行に付き合ってもらえるか?」


入口に立っていたレクスに声をかける

隠れて俺とリオの勝負を見ていたようだが、マップでバレバレだ


「気づかれていたか·····あぁ!いいぞ!ジンとの勝負は俺の修行にもなるからな!」

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