第24話 討伐依頼と盗賊の頭
「た、たすかった·····?」
後ろにいた女の子は相当、気を張っていたみたいで、助かったことに安堵したのか、一言呟くと、そのまま意識を手放した
服がボロボロ過ぎて、色んなところが見えそうになっている·····
「気を失っただけみたいだな·····リオ、ゲートを開けてくれ」
「いいけど、この子を一度町に連れて帰るの?」
「いや、異空間に寝かせとくだけだ、町に連れて帰るのは面倒が増えるだけだからな」
この短時間で戻ったとしたら、いくら魔道二輪でも早すぎるし、
それに、少し気になることもある
「先に盗賊の討伐依頼を終わらせよう、マップを確認するから、その子は異空間に寝かせといてくれ」
そう言って、マップで森を確認する
5000ヘクタールだから森の真ん中に行けば、マップでギリギリ全体を見える計算になるが、とりあえず端から5km以内に人がいないか確認する
「お、いたな·····リオ、森の中に人がいるから走って近付くぞ!できるだけ物音を立てないように気をつけろ」
ここから3kmほど離れたところに、3人いた
3人共盗賊のマーカーなので、近くまで行って確認することにした
身体強化のおかげで、俺達が走ると5分程で3人の近くまで来た
木影に隠れながら3人の様子を見ると、男3人が暇そうに座っていた
男達の背後に草が生い茂っているが、マップで確認すると道があるようだ
「あの草の奥に洞窟があるようだな·····盗賊だし、さっさと倒して洞窟に行くか」
「じゃあ、私にやらせて、私がBランクになるための依頼なんだし、私がやらないと意味が無いわ」
リオがやる気になっているので、リオにやらせることにする
「あぁ、いいぞ、好きなように倒してこい!」
「わかった!やってみる!」
リオがそう言うと、辺りが霧に包まれ始めた
これはリオが考えた水魔法だ
電気の話をした時に、前の世界の化学について少し話をした
その時に、空気中には水分があることや、雲や霧は水が元になった水蒸気であることを説明したが、魔法で霧を作り出した時は、俺も驚いた
「おい!なんだこれ·····霧か!?」
「今まで霧が出たことなんてないぞ!」
辺りを包み始めた霧に気づいた盗賊達が慌て始めた
魔法で作られた霧だとは思いもしないだろう
あっという間に霧に覆われた盗賊達は無駄に動こうとせず、マップ上では微動だにしない
「で?この後どうすんだ?」
勿論、この状況は俺達も同じで、霧のせいで盗賊の姿が見えない
という訳で、リオに次にどうするのか確認してみた
「えっと·····」
「決まってないわけだな?敵が見えない状況で魔法を乱発しても無駄なだけだもんな」
「·····はい、お願いできますか?」
リオは詰めが甘かった
霧を作り出すのはすごい事だが、俺のようにマップが無いとお互いに気配を探り合いながらの戦いになるだけで、ジリ貧だ
「はいはい、·····よっと!」
「グハッ!」、「ゴホッ!」、「ウッ!」
俺は近くにあった拳大の石を3つ拾って盗賊に投げつけた、魔法で倒しても良かったが、この後も盗賊討伐が続くので念の為、魔力温存しておいた
「とりあえず、気絶させたから、後はリオに任せるわ」
石を投げつけただけでは、意識を刈り取れただけで死んではいない
後始末はリオに任せることにした
「ありがと、わかったわ·····」
リオが水魔法で頭程の水の玉を作り出して、盗賊の頭に被せた
水の玉は割れずに留まり、盗賊は溺死した
「なぁ、最初からそれで倒せば良かったんじゃないのか?」
「そうなんだけど·····ちょっといいとこ見せたくて·····」
盗賊を殺したが、特に萎縮している気配はない
この世界で生まれた人間ならこれは普通のことなのかもしれない
「まだ先があるからな、魔力は温存しとけよ?ついでに楽に倒す方法があるが、聞くか?」
「楽が出来るなら聞いてみたいわ」
実は空間魔法で異世界を作れた時に考えていた方法がある
リオに説明をして、俺達は洞窟に進むことにした
草の壁の奥は大きなトンネルのようになっていて
しばらく一本道を歩くと、また同じように草の壁が現れた
勿論、奥に道があるので、マップで人がいないことを確認して進む
草を退けて進んだ先には、高原が広がっていた
周りは急斜面の土壁に囲まれていて、まるで、大きなクレーターの様だった
高原の真ん中には大きな屋敷があるが、周りが背丈ほどの草に囲まれていて草を書き分けないと奥に進めない
マップで確認すると、高原のあちこちに盗賊のマーカーがある
今は昼前なので、このまま突っ立っていたら、そのうち見つかってしまうだろう
「リオ、さっき説明した方法で、そこら辺にいてる盗賊達を倒してみろ」
「え?盗賊がいるの?場所だけ教えて貰ってもいい·····かな?」
「そら見えないよな、えっと·····あそことそこに1人ずついるから音を立てないように静かに移動するぞ」
近場に2人いたので、リオを連れて移動した
音を立てないように慎重に進み、何とか目視できる所まで来た
「リオ、あそこにいるぞ」
「やってみるわ!」
そう言って、手を前に突き出して狙いを定める
すると·····
「うわっ!」
盗賊が一瞬、悲鳴を上げたと思うと姿が消えていた
「できたな、距離の問題はなさそうか?」
「大体10m以内になら、直ぐに出せそうね、それ以上になると時間がかかるかも·····」
「10mあれば十分だな」
俺達がやったことは、簡単に言えば落とし穴だ
通常の落とし穴と違い、俺達の落とし穴は急に足元に現れる
しかも、落ちた先は異空間だ
リオに小さい異空間を作らせた
100人入れる広さが必要だったので、だいたい体育館ほどの大きさにした
これぐらいの大きさならそんなに魔力を消費しなかったらしい
後は遠距離からゲートを足元に作り出して落とすだけだ
全員異空間に送ったら、異空間の中に毒煙でも充満させればいいだろう·····キラースネークの毒がここで使えそうだ
その後も盗賊の近くまで移動して、異空間に落としていった
途中で悲鳴を聞きつけて、何人か駆けつける奴らもいたが、直ぐに落とし穴の餌食になっていた
この落とし穴は正直、防ぎようがないと思う
いきなり足元に穴が空いたら、普通の人はそのまま落ちるしかないだろう·····
「これで何人目だ?」
途中で数えるのを辞めていた俺が、リオに確認する
「えっと·····76人だね」
異空間はリオの管理下にあるため、中に何が入っているか直ぐに把握できる
人の数がすぐにわかるのもそれだ
「100人ぐらいの規模って言ってたからやっと7割超程か·····」
高原全体をマップで確認したが、人が見当たらない
後は真ん中の屋敷を残すのみだ
屋敷にはマーカーが集中しすぎて何人いるのか分からない
「残りは全員、屋敷の中だな とりあえず近くまで移動するぞ」
「そうね·····」
リオは魔力が尽きてきたのか、かなり辛そうだ
屋敷の外壁まで移動して、窓から中を覗く
中には寝てる奴、飯を食ってる奴、喧嘩してる奴、武器の手入れをしてる奴、色んな奴がごった返していた
「後は俺がやろうか?リオは魔力が限界だろ?」
「いいの?そう言って貰えると助かるけど·····」
「リオのおかげで俺は元気だからな、異空間でゆっくりしててくれ、30分事に様子を見に来てくれるか?俺からそっちに行く手段がないからな」
「わかったわ、それじゃちょっと休ませてもらうわ·····」
そう言って、ゲートを開いて異空間に入って行った
「さてと·····何人いるのかな·····」
屋敷の玄関まで普通に歩いていく
誰も俺に気づかない、と言うかここに侵入者が来るとは微塵も思っていないのだろう
『バンッ!』
玄関の扉を思っきり蹴飛ばした
金具が外れて、奥の壁まで飛んでいってしまった
1人が扉と壁の間に挟まっている、運がない奴だ
全員の視線が俺に向く
「よう!」
右手の手のひらを見せるようにして挨拶をしてみた
「誰だテメェ!」
「外の奴らは何してやがんだ!」
「ここに侵入者だと!?」
「テメェここがどこだか分かってんのか!」
盗賊共が口々に色々言いながら俺の近くまで武器を片手に集まってきた
窓から出て、俺の後ろに回ったりして逃げ道を無くしていく
俺は完全に包囲されてしまったようだ
「逃げられねぇぞ?覚悟しやがれ!」
1人の男が叫んで突っ込んできた
俺に向かって、剣を振りかざして来たのでとりあえず蹴飛ばした
それに合わせて他の奴らも俺に襲いかかってきたが、次々に蹴飛ばしたり、投げ飛ばしたりして、どんどん、盗賊の山が大きくなっていく
「ば、化け物だ!」
残り5人になった所で、1人が叫びながら逃げていった
他の4人もそれぞれに別々の方向に逃げていく
「化け物呼ばわりかよ·····」
俺は呟いきながら盗賊の位置をマップで確認して、全員に30cm程の火の玉と水の玉を各1つずつ飛ばしてぶつけた
火の玉が当たり悲鳴を上げて倒れたところに、水の玉を当てて消火する
動けなくなった奴らを掴んで、盗賊の山の上に積んでいく
全員を集め終えたところで、リオがゲートを開いて出てきた
「おぉ!ちょうど今終わったところだ、こいつらを頼むわ!」
「もぅ終わったの!?相変わらず化け物じみてるのね···」
「お前も化け物呼ばわりかよ·····」
俺はグチグチいいながら、リオが開けたゲートに盗賊を放り込んでいく
「結局何人いたんだ?」
「んーと·····107人だね」
「相変わらず、ギルドの情報は正確だよな····」
ギルドの情報網はかなり細かく、正確なのが多い
たまに的はずれな情報もあるが·····
盗賊達を異空間に突っ込んだ後、キラースネークから取っていた毒袋を燃やして、毒煙を作った
覆いかぶすように、空間制御で筒を作り、出口を異空間に繋げる
毒煙が少し漏れてきて危ないので、ちょっと離れて様子を見る、数分で毒が充満するはずだ
「あれ?まだいたのか?こっちに来てるな」
毒煙を送り込んでいると、マップに盗賊のマーカーが1つ出てきて、俺達の方向に一直線に進んで来る
遠くから煙が見えるからだろう
「かなり早いな·····」
俺が呟いていると、草を掻き分けて、女盗賊が現れた
「あたしのアジトでなにやってんのさ!アイツらをどこにやったんだい?」
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