しごけ!耐えろ!偉人対抗イキ我慢選手権

双葉屋ほいる

プロローグ

第1話 注文のひどい選手権

 違う世界のお空の向こう、人間たちの知らないところに、とても美しい女神さまがおりました。

 女神さまは人々の愛をつかさどる神さまでしたが、世界ができてからずっと産めよ増やせよあっはんうっふんを見せつけられてきたので、いい加減うんざりしてしまいました。

 そこで女神さまは腹いせとして、自分の四人の配下にある命令をしたのです。

 その命令とは――



 ※ ※ ※



「急にび出して悪いが、キミには偉人対抗イキ我慢選手権に出てもらいたい」

「は?」


 宮沢賢治は思わず聞き返した。


「偉人……何?」

「偉人対抗イキ我慢選手権だ」

「すまないが聞き直してもわからなかった」


 そう言うと、目の前の美丈夫は長い髪をかきあげて深く嘆息した。


 花巻の実家で息絶えたと思いきや、気がついたら怪しげな儀式のど真ん中で目が覚めた。全く状況がつかめない中、さらに破廉恥なワードをぶつけられてなおのことわけが分からなくなる。


 そもそもここはどこだ。この美丈夫は誰だ。


「すまない、言葉不足だった。私はトゥガル。大いなる女神ダーテ様の配下の一人だ」

「聞いたことのない神だ」

「キミたちがいた次元とはだいぶ離れているからだろう。不埒な催しすぎて我々の世界からはとても喚べなかった」


 いや自分ちでやれよ。


「そんなわけで」

「僕は出ないぞ」

「精子が?」

「違う!!」


 賢治はうんざりして顔を歪めた。


「僕は禁欲生活をずっと続けてきたんだ。禁欲とはパワーだ。今更そんなくだらない催しで消費したくない」


 そう言うも、トゥガルは表情ひとつ変えずにああ、と答えただけだった。


「だからキミを喚んだ」


 トゥガルは続けた。


「正確には『生涯童貞を貫き、自慰さえしなかった宮沢賢治の伝説』を喚んだ。そのままでいい。禁欲の果てに極めた『不射ださずの技』を駆使して、どうかこの戦いに勝ってくれ」

「なんだよ不射の技って」

「やればわかる。勝ち残った者にはダーテさまが願いをひとつ叶えてくださるそうだ」


 締めの一言に、賢治はぴくりと眉をあげた。


 願い、願いか。なんでも叶えてくれるのなら、こんなくだらない戦いを勝ち抜いてでも叶えたい願いがある。


「……とし子に」

「ん?」

「妹の、トシに逢いたい。若くして死んだ僕の妹だ。あの世に行っても逢えるかわからない」


 ぽつぽつと告げられた賢治の望みに、トゥガルは深々とうなづいた。


「ならばやってくれるか!」

「ああ、なんでもやろう。具体的には何をすればいい」


 トゥガルはにっこりした。


「偉人同士イチモツをしごき合うのだ」




 賢治はちょっと決意が揺らいだ。

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