ぼくの大事な車が入院した件について

作者 紫藤 咲

モノカキのサガ。そしてこれは絶対に才能だ

  • ★★★ Excellent!!!

ある日帰宅しようとしたら、車の窓が全壊している。誰がやったのか。いたずらなのか怨恨なのかもわからない。すべてが理不尽すぎる話だ。事件はある意味誰にでも起こりうる内容ではあるのだが、作者の読みやすくわかりやすく面白く、構成と引っ張り方の見事さでついハラハラと楽しみに読んでしまう。どんな感情も俯瞰で、何が起きてもどこか冷静に観察して文字にする、このモノカキのサガにきたら! 自分自身の不幸すら人に楽しんで貰おうとするエンターティメントぷりときたら! そういうのを『才能』っていうのだろう。この作者の小説は「小説とは、根も葉もあるウソ八百」という佐藤春夫の言葉を体現したものだ。エッセイは彼(絶世の美女かもしれないが)のひょうひょうとして、どこか醒めていて、それでいてあたたかでユーモラスな人柄を楽しめる。読者としては、もうお書きになるものを楽しみに心待ちにするしかない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

その他のおすすめレビュー

佐伯 真魚さんの他のおすすめレビュー 56