カルファの診療所にて… 中

 2階から3階に進んだアサトら、3階は、見慣れない機材が並んでおり、薄く汚れた棚が並んであって、その中は、本や液体の入った瓶に人だろうか…、なにかの標本みたいなのが並べられてあった。

 机や椅子もある。

 机には顕微鏡と言うもが置かれてあり、それで色々調べるとカルファは笑っていた。


 ココにはレントゲン室やMRI、分析器等の機材があり、建物の上に太陽光発電の機材があって、その太陽光を蓄電して、これらを動かしていると話しており、とりあえず、簡単な検査はこの診療所で可能と言う事である。

 1階には手術室や処置室が用意されているらしい。

 他にも、隠しているが、エレベーターもあるとの事であった。


 3階奥へと進んだアサトらの目の前に、見覚えのある画面を伴ったモノが見えて来た。

 「あ…」

 アサトの言葉にクラウトが目を細め、アリッサが目を見開いた。

 そこにある物は、エイアイの弟子のゲインツの家にあった物にそっくりな物である。


 その画面を伴った物が置かれている机の椅子に座ったカルファは、眉間に皺を寄せて、近くにある紙を見た。

 ブツブツ何かを言っているが…、しばらくすると、画面を伴った物のそばにある、真っ黒の箱についているボタンを押し、目の前にある画面と言う場所に目を近づけた。


 「それって…」

 アサトの言葉に一度振り返り、再び画面を見るカルファ。

 「パソコン…だけど…、接続がイマイチよくわからないのよネ…。ゲインツもそうだけど、エイアイも意味のわからない事ばっか言って…。とりあえず、取り扱い説明書よこしたけど…。」

 カルファの目の前にある画面が、黒から青に変わると、なにやら文字が映し出され、ボタンのついている箱が奇妙な音を出して動き始めた。


 「技術者が来て、セットしていったけど…。なんだっけ?オンラインでどうのこうのって言っていた…。ゲインツの場所とエイアイの場所…そして、この王都をなんとか…有線で繋いでいるって言ってたな…。何年前だ?」

 画面が変わる。


 「あぁ~、面倒だな…。そう言えば…『デルヘルム』にも繋いでいるって言ってたな」

 画面を見入っているカルファの後ろには、クレアにクラウト、アリッサにアサトが様子を見ている。

 その視線を感じながら、画面の手前にある丸いものを手にしたカルファは小さく動かしだした。


 「それで…何ができるんですか?」

 クラウトの言葉に、ポケットからよれよれのたばこを出して、口に銜えると、そのフィルターを小さくかんだカルファ。

 「いつもは…研究とか、診断とか、医療の分野で使っているけど…。今日は…、ま~、見てな……」

 紙に再び目を通したカルファは、手にしているモノを動かし、紙をみて、動かし…紙をみて……、そばにあるキーボードを弾き、再び紙を見ては、動かしを繰り返し…。


 「…これだな…」

 小さく言葉にすると、丸い物を小さく人差し指で押して見せた後に、画面の上にある丸い物を確認していると…。


 画面から呼び出し音…。

 なぜかわかる?

 昔…、いや、昔ではない、聞き覚えのある音が画面から流れている。

 その音は……。


 「それでクレア、さっきの電話の内容わぁ?」

 座っている椅子を回転させて、アサトらへと向いたカルファの言葉に、アサトらもクレアを見た。

 「あぁ~、さっきのね。ライザたちがカギエナで、謎の軍と遭遇、戦闘をしたそうよ」

 「謎の軍?」

 クラウトがメガネのブリッジをあげた。


 「そう、黒いモノの軍のようね」

 「え?」

 アサトが目を見開いた。


 「とりあえず、みんな大丈夫みたいね。ただ、熊漢がケガをしたみたい、だから、急いでこちらに向かうって、明日の夕方には着くように進むって言う話よ」

 「…そうなんですか…」

 肩を落としたアサト。


 「黒いモノ?」

 カルファが眉を上げた。

 「そう…、はっきり言って全身真っ黒の兵士が集った軍みたい。それも死者…だったみたい…」

 「死者なのですか?」

 クラウトの言葉に小さく頷いたクレア。


 その姿を見たカルファが、目を細めて何かを考えている。…と。


 「はいはいはいはい…」

 画面の向こうに、丸い淵のメガネと顔半分をマスクで覆った者が現れ、その顔が画面一杯に映り、映し出された顔に目を見開た、アサトとアリッサ、そして、クラウト。


 …なに、これ?…。


 画面に映し出されている者は、確かに見覚えのある人…。


 …たしか……。


 椅子を回して画面を見たカルファ。


 「あ~、レンコか…。とうちゃんわ?」

 「…父は出払っております。」

 「そっか…。どこ行った?」

 「…デルにいると…。昨日帰って来て、今朝、また出ましたから…」

 「…なら、デルに連絡するか……」

 「そうしてください!はいはいはいはい…」


 …そう、ファンタスティックシティにいた、エイアイの娘、レンコである。

 そのレンコは、ハイを連発しながら、いきなり画面から消え、画面が砂嵐のようなザーと言う音を立てて灰色になった。


 「レンコさん?」

 アサトの言葉に、再び何かを操作しているカルファが小さく頷き、手にしていたモノを指ではじくと、再び聞き覚えのある音が画面から流れて来た。


 「デルにいるって…。何しているんだろう…」

 呟くように言葉にするカルファ。

 カルファの後ろ姿を見たアサトは、クラウトとアリッサへと視線を向け、その2人も、驚きの表情を浮べて画面を見入っている姿を確認した。


 …よかった、僕だけではなかった…


 「…今のって…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る