4.孤高の狼

第79話 プロローグ

 俺は化け物だ。


 別に思春期特有の妄想なんかではない。妄想であったらどれだけ良かっただろうか。でも、他人が俺の事をそう呼ぶんだ、仕方がないだろ。


 いつからだろうか……俺がそう呼ばれ出したのは。


 村に住んでいる全員からそう呼ばれた。そう、全員だ。なんたって一番最初に俺の事を化け物だって言ったのは両親だもんな。本当、笑っちまうぜ。

 声を枯らして否定しても耳を傾ける奴なんて誰一人いない。でも、俺は諦めなかった。自分が化け物だなんて認めたくなかった。……まぁ、無駄な足掻きだったんだけどな。


 いや、全員って言うのは語弊があった。


 化け物扱いされた俺にも一人だけ心が休まる相手がいた。わざわいをもたらす、と村から追い出された俺に優しく接してくれた人が……他の連中に何と言われようとも関係ない、その人さえいれば俺はもう何も望まないと思えるような人がいた。


 そう……んだ。その意味は多くを語らなくても分かるだろう。


 そんなに見たいのか?


 そんなに知りたいのか?


 ならば見せてやる。


 ならば教えてやる。


 俺の大切な者を奪ったお前らのために、俺は本物の化け物になってやるよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る