034 浮雲はそぞろに流れ…… 句切れなし、本歌取り

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  緑深き日、くもを眺めてよめる


浮雲は そぞろに流れ 小止をやみ無く 結びて消ゆる 世の習ひかし


・うきぐもは そぞろにながれ おやみなく むすびてきゆる よのならいかし

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[通釈]

 草葉の濃くなった日に、空を眺めて詠んだ歌

 空に浮かぶ雲は、当てもなく流れていき、途切れることなく生じては消えて、そのさまは、世間によくあることと同じであるよ。


[補註]

・句切れなし。


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浮雲は そぞろに流れ 小止をやみ無く 結びて消ゆる 世の習ひかし

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[本歌取り]

  沙弥しゃみ満誓まんせいの歌

351 世の中を何にたとへむ。朝発あさびらき、漕ぎにし船のあとなきがごとし

◯世の中を如何どういう物に譬えようか。言うて見れば、ちょうど朝の船出に漕いで行った船が、その漕いだ痕さえもつかないようなものだ。(死んだ後は、この世にいたという、記念さえ残らないのだ。)

『日本の古典 2 万葉集』河出書房新社、整形引用者。


―――――

浮雲は そぞろに流れ 小止をやみ無く 結びて消ゆる 世の習ひかし

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(令和元年七月二日)(二〇一九年)(夏歌なつのうた

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