【隷属は群がり】

第293話

【隷属は群がり】


 地下鉄から

 蜂の巣をつついたように

 出てくる、出ていく

 人、ひと、ヒト

 私もつられて、連れられて

 出て行く、流れる、流される


 流れは吸い込まれていく

 狭い階段へと

 自然に逆らい登り行く

 前の人の足元を見て

 顔を下げたまま

 皆一様に、黙りこくって

 無表情で、くっつかない様に

 冷たい流れに、ひしめき合って


 私は立ち止まってしまった

 この人川の中で

 私は頭を上げ、振り返ってしまった


 私は流れから小岩へと変わり

 皆一様に私を綺麗にかわしていく

 誰一人として顔を上げずに

 私の両脇をすり抜けて、また合流していく


 私は前を向き直し、上を見上げた

 先ほどは見向きもしなかった流れの一部は

 私を見下ろしていた

 無表情に目線だけを下げて

 冷たい流れに冷やされた

 凍てつく視線だった


 いくつかの視線を雨のように浴び

 私も冷えていく

 流れることで、どうやら人は

 凍えないで済むようだ

 再び私は下を向き

 小岩であることを、やめた

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます