【良好な絶交】

第292話

【良好な絶交】


 なぜ怒っているかがわからない。

 なぜ苛立っているのかがわからない。


 私はいったい、

「なに」に対して謝ればいいのだろうか。

 頭をひねり、謝罪の言葉を紡ぐのだけれど

 やはり、一向にわからない。


 ごめんなさい。

 許してほしい、と

 あなたに縋りたくはない。

 そんな言葉、などではない。

 私はいつもそう重い思い、

 だから

 中々謝ることができずに溜息。

 いつも、あの日も、いつまでも。


 許さないでほしいから、

 許されてなどいけないと

 私は自分を責めるから、

 私はいつも、重い思い。


 ごめんなさい。

 自分の思いを伝える言葉。


 許して下さい、ではなくて

 私のあれこれこのことが

 きっとあなたを傷つけたから

 だから

 償わせて下さい。

 償う時間を乞う言葉。


 あなたのそばにいることを、

 どうか見逃しくださいまし。

 祈る気持ちを伝える言葉。


 ごめんなさい。

 償うきっかけを保持する言葉。


 なにがあなたを傷つけたのか

 それすら、知りえないならば

 それすら、わからないならば

 それすら、私はあなたから、

 教えてもらえぬままだから

 いつまで経っても、いつになっても、

 償うことができません。

 謝ることすらできません。


 それすら

 わかち合えないのなら。

 そのまま

 消えた方がいいのでしょう。

 このまま

 切れた方がいいのでしょう。

 縁と縁

 あなたと私の

 縁と縁


 さようなら。

 そして、

 ありがとう。


 いままで

 どうも、

 ありがとう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます