【湧き水】

第289話

【湧き水】


 枯渇した

 頭の中身が枯れ果てた


 心もなにも生まれない

 感情も理性も

 思考も懊悩も

 なにもかもが

 こてんコテンに

 干からびている


 潤いがほしい

 ほしい、ほしい

 さもしいよ、ひもじいよ

 わびしいよ、さみしいよ

 潤いを欲する己のか細い声が

 徐々に徐々に

 雷鳴のごとく

 私の内へ轟いていく


 その轟きが私に感情を与え

 与えられた感情を制御する為の理性を獲得し

 獲得した理性を用いて思考を巡らし

 巡らせた思考によって懊悩に苛む


 そして苛みもがく私は

 身をねじり、よじらせて

 折角染みわたった潤いを

 絞りだしてしまうのだらう


 いつの間にか私の内に染みわたっている潤い

 いつもなぜか投げ捨てるように

 いつもどこかへ撒き散らすように

 意思を運ぶ脈動の血液を停止させて干乾びている私


 枯渇し、潤い、圧搾し

 干乾び、潤い、振りしぼり

 干上がり、潤い、撒き散らす


 みずみずしく、しらじらしく

 うやうやしく、いまいましい


 湧きあがっているのだらうか

 塞がっているだけなのだらうか


 水面はすぐそばに

 すぐそこに

 目の前に

 この胸に

 この頭に

 内面に

 内なる世界に

 広がっているのだらうか

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます