【平安な風に酔って】

第281話

【平安な風に酔って】


 ごめんなさい

 ごめんなさい


 時折、無性に謝りたくなるのです。

 誰にではなく、何をでもなく、

 つつがない日常への不満に対してでもなく、

 ただただ無性に、謝りたくなるのでございます。


 ごめんなさい

 ごめんなさい


 何もしないことに対する後ろめたさ。

 や、

 生きていることに対する申し訳なさ。

 そんな陳腐なことかもしれません。

 いただきます、と命の儚さに思いを馳せない、

 傲慢な日常に対しての謝罪なのかもしれません。


 ごめんなさい

 ごめんなさい


 こうやって謝ることで許されると思っている

 その卑しさこそが

 本当に謝りたい事柄なのかもしれません。


 しかしながら、

 私が口にしたい本当の言葉はけれど、

 ごめんなさい、の謝罪でも、

 ごめんなさい、の贖罪でもなく、

 ありがとう、の感謝なのだと気づいていて

 尚も、

 謝り続けているこの不肖な私が一番

 許しがたい存在なのでございます。

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