【頭痛】

第269話

【頭痛】


 死ぬことが分かっていても人は、生の意義を追い求める

 死を受け入れて尚、生にすがり、生を真っ当しようとする


 いつかは白紙になると分かっているノートへ必死に文字を綴り、絵を描き、色を塗り、線を引き、奇麗にまとめようと抗い続ける


 なぜなら

 死は無ではなく、

 死は自我の存続の破棄でしかなく、

 死を向かえても尚、己が存在した事実と記憶が残るからである


 己のノートが白紙になっても、他のノートに己のノートのことが綴られていることを知っているから

 死後を考え、死して尚、人の目を気にし、ノートを彩ろうとする執念

 生きるとは、他人に生かされることなのだろうか


 なぜ生きるのか?

 生きているからだ


 ではなぜ死なないのか?

 死という一つの未知よりも、生にある無数の未知に今はまだ興味があるだけだ

 生にある未知への興味が薄れ、死への興味が勝った時、私は自ら死を選ぶだろう


 苺ショートケーキの苺

 それが私にとっての死だ


 できることならば

 残しておいた苺を誰かにとられる、

 などという喜劇にならないようにしたいものだ


 自分にとっての悲劇は、他人にとっての喜劇にしかならないのだからね

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