【素の巣】

第263話

【素の巣】


 窓を開けてください

 どうか、どうか

 窓を開けてください


 震え舞う雪さえ

 顔色わるく、青白い

 凍てつきの日でも


 身体を取り巻く全てをなげうって

 体温を放出している透明な風さえ

 汗をかいてじめじめとさせている

 熱帯の日でも


 喧騒渦巻く刺々しい

 言の葉の雨の日でも


 どうか、どうか

 窓を開けてください


 あなたのその快適な部屋の空気を

 外で待つ私に

 どうか触れさせてください


 私の窓は開いています

 どうか私の空気に触れてください

 快適な部屋ではありません

 けれど

 私が育って、私を育てた

 私だけの部屋なのです


 私の部屋を見てください

 片付けても、余計に汚れの目立つ

 この部屋を

 どうか、どうか、見てください


 それでもやはり

 入りたくない、と思うのなら

 私をあなたの部屋へ

 入れてください


 あなたの部屋に入れるのなら

 どんな環境でも

 私は心地がよいのです


 どうか、どうか

 窓を開けてください


 私に顔を見せてください

 陽の下で見たあなたの顔が

 どんなに醜かろうと

 私は窓を閉めません


 ですから

 どうか、どうか

 窓を開けてください


 あなたの

 心に

 触れさせてください

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