【醜悪の悪臭。】

第249話

【醜悪の悪臭。】


 なにが楽しくて私は物語を紡ぐのか

 なにが悲しくて私は愚考を晒すのか

 なにが虚しくて私は汚泥を捏ねるのか。


 私の表現する物語など

 私が感受した風景や手触りや香りや音色や甘味の残り粕でしかない

 吸収した風習や痛みや匂いや騒音や苦味といった私を構成する養分の絞り粕

 いわゆる糞でしかない


 ひねり出した糞を粘土のようにコネコネ、こねこね、仔猫ね、子ネコネ、子ねこね、コネコね、コネコネ、こねこね、捏ね繰り回して

 そうやって自らの手を悪臭に染め上げていくのだ


 臭い。

 ああなんて臭いのだらう。


 だが、糞とは得てして私が食した敬愛すべき生命たちの一断片であり、感謝を注ぐべき星屑たちの更なる星屑なのだ

 それらは臭くなどない。

 臭い原因は私の身体から染みでる胆汁や腸内細菌どものせいなのだ。

 とどのつまり、

 私が臭いだけなのだ。


 臭い。

 ああ臭い。


 私はなんて臭いのだらう。

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