【終身の就寝。就寝に執心。】

第248話

【終身の就寝。就寝に執心。】


 死ぬことのなにをそんなに畏れ怖がっているのだろう。

 死なれることのなにをそんなに忌み疎んじているのだろう。

 僕らは眠るときに、「おやすみなさい」と言って、愛おしく親しい者との別れを告げている。

 眠る者も、見送る者も、同様にして別れを受け入れている。


 目を閉じ、目の前の開かれた己の世界にも別れを告げて。

 己の内なる開かれる世界へと旅立つ。

 夢を潜って向こう側へ。


 僕らは毎日、死の別れを体験し、訓練し、そして途絶えている。

 たとえそれが数時間の一時的な別れだとしても、僕らは別れを覚悟し、受け入れ、そして離れている。

 そのまま永遠の眠りに就くことだって十分に有り得るのに。

 そのまま永遠の別れになることだって十分に有り得るのに。

 どうして、さも当たり前のように、途絶えた自我が再び継続されることを皆は信じていられるのだろう。

 いつから皆は、眠る前の不安を、そのまま消えてしまうのではないか、といった赤子を泣かせるような畏怖を、忘れることができたのだろう。


 僕は未だに信じることができずに嘆息。

 眠る度に僕は死に。

 覚める度に蘇る。

 いつかはいずれ、絶対に。

 覚めない日が巡りくる。

 いつかはいずれ、絶対に。

 別れは突然訪れる。


 永久を別つ就寝が。

 今日であっても良いように。

 精一杯、あなたを見詰めて生きようと。

 僕は自分に誓う朝。


 枯渇し途切れる終身が。

 明日であっても良いように。

 精一杯、今日を生き抜き眠ろうと。

 瞼を開く僕はまた。


 このままそのまま僕のまま。

 永遠を迎えてもいいと重い思い。

 今宵も僕は目を閉じる。

 眠りの別れに落ちる夜。

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