【思考逃避】

第241話

【思考逃避】


 光の突進と波の揺らめきの

 一切を遮断した暗闇で

 私は目を開く


 黒色の一切が広がるこの空間を

 私は見つめている


 私は目を閉じる

 それでも黒色の一切が続くこの空間を

 私は見つめていた


 何もない空間にいるのか?

 と自問したくなったが

 私は床に支えられ

 数歩ずれれば何かにぶつかる

 しかし私の瞳は

 黒色の世界以外を感知しない


 私の認知はどうやら

 この暗闇に沈んでいる世界には

 関係がないようだ


 では、

 私が見つめる必要はないのではないのか?

 私が見つめられる必要もないのではないか?

 どうなのだろうか?


 自問は

 この暗闇以外を認知させてくれない世界では

 自問にしかなり得なかった


 気がつけば

 耳は色のついた音たちを受け入れていた

 小鳥の挨拶や

 ゴムが砂利を弾き、じゃれあう音と

 規則的なエンジン音

 遠くで空気を切り裂いて走る、鉄箱の音と

 鳴き声よりも緻密な、幼いはしゃぎ声たち


 私は目を開く

 闇の一切が遮断されたいつもの部屋で

 私はかさねて自問する


 自問はなんとも軽快に

 願望へと移ろいだ


 私は見つめられたい

 だから私が見つめたい

 それでいいじゃないか、と

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