【志なば諸共】

第240話

【志なば諸共】


 ぼくより身体の柔らかい人は多いし、

 ぼくよりも力強く技をこなす人や、身体をしならす人だって

 それはもう一杯、本当に一杯いる

 数えたくないほどに、溢れかえるほどに


 技の数や難易度だって、皆はぼくよりも上で、

 きっと

 これからはもっと増えていく


 でもね

 ぼく以上にぼくらしく踊れる人なんて

 この世のどこにもいないんだ


 音楽の喜びを知った猿人たちの過去にも

 これから進化し続けるこの先の未来にだって

 ぼくよりぼくを踊れる存在は現われない


 ぼくの踊りは、

 唯一無二の踊りなんだ


 でも、今はまだ

 全然有り触れた踊りで、

 澱みに紛れた蟻ん子の一匹に過ぎないのだけれど


 でも、だからこそぼくは

 死ぬ間際の一瞬に、胸をはって

 ぼくこそがぼくなのだ、

 そう身体で歌えるように

 今を踊ろうと思うんだ


 ねぇ、駄目かな?

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