【幾久しく】

第224話

【幾久しく】


 午前三時

 欠伸をした夜が闇を従えて帰っていく

 砂浜の波がひいていくように闇も退き始め

 海辺の湿った砂のような彩へ変色していく徐々に


 雨は止み

 そよ風のような日差しが顔を覗かせる

 夜の大切な宝石たちを

 覆い隠すようにたむろっていた黒雲は

 高度五千メートルの座標で

 氷結した塵となり

 朝の化粧として白く輝きながら

 拡散していく身支度を

 今はもう、している


 化粧の隙間から垣間見える朝の空

 やはり空はそこにあった


 黒雲と雨のカーテンで覆い隠されていた間

 空は消し去られ、存在していないのでは、と不安だった昨夜


 しかしその実

 瞳に映らずともそこには空が存在しているのだ

 と

 盲目的に信じていた私はいつも家の中


 こうして不安がることで、確認し続けなければ

 私からすぐにでも薄れ、消えていく

 空への一途な、この想い

 それは、幻相

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