【ぼんやりと】

第207話

【ぼんやりと】


 只今、電車内の私


 重力の移り変わりに反発しながら

 焦点を合わせず、眺めている

 ただ眺めている


 山や畑や時折立ち並ぶ直線や直角の

 "ふち"から"ふち"へ流れては消えていく

 色彩に模られた実像


 何処に消えたのだろうか

 今流れていった竹林や

 先程から続く田園は


 気がつけば消えていた

 ずっといた筈の

 私の左手の甲に似た山地も


 出て来る並びは皆一緒で

 消える時刻はバラバラで


 あぁ、まるで私のようだな


 呟いたその言葉が

 この身奥底に再び戻ってきた刹那

 やっと理解した


 流れていたのは私なのだと

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