【悠然の死は構える】

第187話

【悠然の死は構える】


 地表伝う、遥かかなた

 漣により生み出される

 大いなる静寂の海

 と

 色彩振りまく後には全てを

 闇一色に染め上げる清雅なる空


 無限に続くようなこれら二面に

 有限を与えている境界線

 双極の交わるこの境界線にのみ存在する直線

 それは、自然に在る唯一


 時に軌跡と呼ばれ、奇跡と見つめる流れ星

 この残像により一時現れる

 この儚い直線はまた、特別なもの


 昼には欠けることなく堂々たる存在

 青空に浮かぶ、それは太陽

 欠けながらも復活を約束されて

 星群に見守られ、漆黒に浮かぶ、それは月輪


 古においてこれら

 直線と円の神秘さといったら

 悠然の死をも退かせる


 それに比べて今日日の

 直線の乱雑と混濁

 軽薄で低俗な多種多様の円

 これらに埋もれた唯一の直線はいずこへ?

 これらに冒された円は災いへ?


 心底に沈んだ不浄は表面へ浮上し

 蘇る追憶の死は

 穢れの皮膜を纏い、現代へ

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