【大きな流れ。抗う小石。】

第183話

【大きな流れ。抗う小石。】


 弱きことは罪ではない。

 だが、何かを守ろうと行動したその瞬間。

 ――弱きことは罪になる。


 弱きものを蹂躙するは罪である。

 世界は弱いものが強いものに包容される。

 世界は強いものが弱いものを内包する。

 それらは排除でもなく排斥でもなく、

 循環という名の抱擁である。


 強きものは弱きものを助長する。

 また、弱きものも強きものを助長する。

 どちら側に内包されるか、という差が残るだけである。

 世界はまこと上手く回っている。


 だが、それらの中にいる我々が、

 必ずしも幸福を感じるとは限らない。


 だからこそ、我々は、

 弱きものから搾取し、差別し、欺き、嘲り

 強きものが独立しようと抗っている。


 循環からの離脱。


 それの行き着くところが、

 瓦解という崩壊のみだと知っていながら。

 私だけは大丈夫なのだ、と傲慢になってやしないだろうか。


 幸福とは現象ではない。

 幸福とはいつだって自分なのだ、と気付かないものだろうか。

 抗う矛先を、見間違えてやしないだろうか。


 本当に抗うべきものは、我々の内にいるもの、ではなかろうか。


 己を見詰めよ。

 己と見詰めよ。

 己が見詰めよ。

 目を逸らしているだけでは、

 抗うことにはならないのだから。

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