【夢中になれた時、私の時間は停止する】

第172話

【夢中になれた時、私の時間は停止する】


 全力を出し切った後の清らかな快感は、病みつきになる

 でも、そのことを求めて全力を出そうとしても

 出せるものではないのが、とても、もどかしい

 全力を出すことは、清らかさとは無縁の、見苦しさが伴うからだ


 徐々に徐々に、

 楽しみながら、のめり込みながら

 外へと広がっていくようで

 内へと潜っていく


 世界が私へ浸透していくかと思いきや

 私が世界へ溶け込んでいたり、

 私が私へ閉じこもっていくといつしか私は

 何もない広い広い広大な空間に漂っていたりする


 それは意識的になろうと試みるも

 成功する時は必ず、いつだって

 無意識に、いつの間にか

 これでしか成せない不可思議、難しさ


 今のところ、条件は二つ

 楽しむこと

 と

 求めること

 それだけだ

 それだけなのに、それがまた

 一番難しく、もどかしい

 たまにではなく、毎日だと、尚更なのだ


 自分のことなのに、

 自分を離れなくてはならないのだから

 なんとも我儘で、矛盾した事柄なのだろう


 心を無に、

 それは空になることではない

 純粋な思いのみを留めること

 無我の境地、

 即ち、我執という己を追い出し

 偽りのない己を宿して、身を任せること


 ごちゃごちゃと雑念の多い私にはとても困難

 ああ、単純な人間に成りたいものだ

 いやはやまったくどうしたものか

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます