【馬鹿な凡人、略して】

第170話

【馬鹿な凡人、略して】


 人は見えないものに翻弄させられる


 死・心

 未来・宇宙

 意味・価値

 愛・幸

 悪・善

 意志・意思・遺志


 目の前の見えるものだけに

 とらわれていられれば

 こんなに楽なことはなかったのに


 自然の呪縛から脱しようと

 抗った結果が、

 自然に呪縛されていたほうが

 良かったのではないか、

 という疑念を生み

 さらなる呪縛と困難を

 生みだしてはいないか


 もしかしたら自然は

 呪縛していたのではなく、

 ここから動いてはいけない、そっちは危険だぞ、

 と我々を

 抱きかかえていただけではないのか


 そして、

 こういった無意味な思索も

 てんで的外れな考察も

 その忠告を素直に聞き入れていれば

 しなくとも済んだだろうに


 目の前へと訪れるものたちを順番に

 受け入れていくことができただろうに


 そもそも、

 受け入れたくはない、

 という逃避から

 この知性は生まれたのではないのか

 ならば逃避こそが知性の源とでも言うのだろうか


 そうか、

 どこまででも逃げおおせてみせよう

 どうにか脱してみせよう、

 と逃げているだけなのだ、そうやって我々は

 それを傍から見たら

 進んでいるように見えているだけなのだ


 なんとも滑稽ではないか

 なんとも空しいではないか


 だがどうだろうか

 当の本人たちは

 なんとも楽しげに逃げている

 まるで、鬼ごっこをして

 追いかけられている子どもたちの様だ


 なるほど、

 それはそれで

 納得できそうだ


 これでいいのだ、と

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