【飛躍】

第156話

【飛躍】


 虚像や想像、影などのほうが

 現物よりも素敵に見えるのは

 何故だろうか


 それはきっと

 現物の醜さをも同時に受諾してしまうから

 なによりも

 その醜さを許容できない

 己の器の小ささ故に、であろう


 もしくは

 逃避していた自身の醜さを

 見せられているかのような錯覚が

 引き起こるからだろうか


 だとするのならそれは

 不完全な己を完全な存在に

 構築しなおしたいという

 生命に宿る根源の欲動が

 万物が歌う叫びが

 私にも残っているということだろうか


 だがそれはつまり

 死を甘受すること、

 に他ならないのではないだろうか


 もしかしたら私という存在は

 宇宙という欠けた存在が

 完璧な存在になり得る為の

 情報集めをしている

 使い捨て媒体に

 過ぎないのではないだろうか


 私は生きる間の情報を蓄積するだけのメモリーであり

 死することによりアップロードすることができる端末

 死することにより意味を与えられるだけの存在なのかもしれない

 


「いやいや、それはないですよ」

 ですよね、猫さん

 話が飛躍しすぎました、ごめんなさい

「そうそう、んなわけねーじゃん、おまえはアホか」

 あなたは鼻息が荒いですよ、犬さん

 とりあえず二時間ほど息を止めていてくれませんか

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