【飛び出していく】

第155話

【飛び出していく】


 飛び出していく


 ただの骨組みと化して凍えている銀杏の枝に、

 西洋被れな獅子や消防車の形をした葉っぱを

 色の青い折り紙でそれでいて空は見えなくて

 形作っては飾り付けていた幼稚なピエロは駆けだして


 飛び出していく


 マジックミラー越しの観客には脇目もふらず

 色彩のバランスがいびつな布切れのテントを

 力任せに、掴み、破っては


 飛び出して行く


 見慣れない針葉樹が前に習え、をしている

 誰に言われるでもなく

 人波の入り雑じる乾いた道で

 砂利の色をした絵の具を右手に佇み


 飛び出していく


 散らかし喚いて眠くなる

 小指の長さほどの青空色に反射する高層ビルに

 そんな傲慢な夢のイタズラ描きをしたピエロ

 この蚯蚓の擦り胡麻の香りのした道と同じ景色に塗り潰した揚句は

 陽気なピエロに似つかわしくのない何とも糞真面目な顔をして

 破いたテントの囲いに戻って行った


 私に残されたのは

 ふわふわするほどに乾いた砂の後片付けと

 契れた色彩のいびつなテントの裁縫だけである


 飛び出していく


 ピエロに右手を絡まされながら

 道化にかわっていたのだろうか私も

 それとも

 ザラざらと歯の削れるような道を外れて

 つるツルな隊列の乱れを許されないタイルのピースの繋ぎ目を覗き

 目を開いてはいますが私には見えていませよ

 と

 全身から滲みださせて硬直していたのだろうか


 右手には幼稚なシャベルを握り

 左手には絵の具のバケツをぶら下げ

 私を私だと位置付けている惑星であろう光を仰ぎ見て

 不格好な程に隙だらけな身体を他所に

 よくよく思考を巡らせている


 幾分かの分かれ道をさ迷った思惑は、結局の所まだここにいるわけで

 網膜の刺激に意識を戻す事に懐かしさが加わる

 次の動作に移る初動が刹那に脳裏へ呼び覚まさせたものは

 いく時間前の道化そのものであった私は

 目の前の、配色を失敗した目障りな空を握りしめている様に

 砂まみれの床で佇んだままであった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます