【散歩あゆめば】

第147話

【散歩あゆめば】


 タンポポが見たくなった

 だからタンポポを探しに外へ出かけた


 とりあえず山の方へと歩いた

 山の麓まで来たけれど

 タンポポはまだいなかった

 中々に汗をかいた

 下ばかりを見ていて気がつかなかったけれど

 今日は良い天気だった


 帰りは空と地面と

 ついでに

 私以外の動いているものへと目を配った


 ゆっくりと浮遊する雲や、

 細かく揺れて色がボヤけて見える背の高い草

 好き勝手自由に葉を踊らす新芽たちから

 緑色に染められている木

 それから

 忙しなく棚引く旗に

 私の物まねばかりの今日は一段と濃い影


 立ち止まる人々は皆

 目的地の一緒な車たちの流れの前だし


 ネオンたちは皆一様に

 自己主張は強烈で

 勤勉な信号機に張り合っていた

 せっかく明るい空のしたなのに


 意識が身体から

 外れているのか、出て来ないのか

 解らないけれど、ひたすらに

 世界を見つめようとしていない

 着せ替え人形のような人たちは

 私に気がつきはしていなかった


 見慣れた道へと辿り着き

 家でもないのに帰ってきた、

 などと都合の良い感想を私が抱いた頃には

 身体は中々に冷えていた

 見上げて空に別れを言うも

 今は天気の良かった空だった空しか残っていなく

 寒々としていて

 風邪をこじらせそうな私に

 保冷剤のような風を吹き下ろしていた


 私はどこかへ行っていたのだろうか?

 どこへも行っていないし

 帰ってきてもいない気がした

 なんだか異様にわからない

 それでも疲れだけは消えていなかった


 今日は早く寝よう、お風呂に入って

 裸の上に温もりある水の衣をくるまって

 今日は早く寝よう


 探しものは見つかりましたか?


 シャワーの湯気に囁かれ、私は恥ずかしくも思い出した

 忘れてしまっていたことを

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