【格闘】

第143話

【格闘】


 ふわふわだった水滴が

 しとしとに変わって

 ぱらぱら,ぽつぽつと許可なしに

 ぶつかってくるのです


 真っ直ぐ前を向いているのに

 ぶつかってくるのです、顔に


 そうか

 歩いているからぶつかるのか

 と思いまして


 一度止まってみたり

 後ろ歩きをしてみたり

 前に歩くと見せ掛けて

 不意に横に歩いてみたり

 色々してみせたのですが

 まだぶつかってくるのです


 それでは最後の手段と致しまして

 下を向きました所

 ぼたぼた,ざーじゃん

 と怒るのです


 皮膚に馴染む程度だった雫も

 今ではこの通り

 顎に滝が流れておいでです


 もう私は許しません


 上を向き、目を見開き

 雨の雫を正面から見据え

 ぶつかってやるのです

 思い切りぶつかってやるのです


 土砂降りの中、立ち尽くす私


 しかしながら

 どうしてでしょう


 絞らない濡れ雑巾のような私の

 内面はこんなにも

 清々しい程に乾いてしまったのは

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