【王様の耳】

第133話

【王様の耳】


 僕は、「王様の耳はロバの耳」と叫ぶんだ、きっと。


 自分と切り離された世界へ、叫ぶのだ。普段は言えないことを、抑圧された言葉を。

 自分と切り離された世界は、自分のことを知らない世界だ。

 だから僕は、安心して、叫ぶことができる。

 本音を、さらけ出せる。


 けれどそれは、着飾らないことではないんだ。

 それを勘違いしてはいけないよ?


 普段は着飾れないような装飾を、

 自分に付加することができる。

 自分を着飾ることができる。

 自分を偽ることができる。

 そのことも、自分と切り離された世界へ叫ぶことで、できるんだ。安心しながらね。


 どこから叫べば安心できるかと言えばね、それは、自分と切り離された世界へ繋がる、「穴ぼこ」なんだ。

 そんな便利な穴ぼこが最近は、至る所に空いている。至る所で空けられる。

 便利な世の中になったものだよね。


 でもね、気をつなくてはいけないよ。

 その穴ぼこは、他の穴ぼこたちと、全て繋がっているんだ。

 そして、王様の身近にも、穴ぼこは沢山空いている。

 王様がその穴ぼこを覗かなくたって、聞こえてくるんだ。

 叫び声が。僕の叫んだ、あの、叫び声が。


 でも、よくよく考えて、くよくよ思いだして、よくよく目を凝らしてみるとね。

 叫び声は、やっぱり、僕から発せられたものなんだ。

 穴ぼこへ叫ぶことが習慣になりすぎて、僕はいつの間にか、本当にいつの間にかなんだけれど、叫んでいたんだ。

 王様へ。

 身体から滲むように。


 そして懲りずにまた僕は、

「王様の耳はロバの耳」と叫ぶんだ、きっと。

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