【知人E】

第130話

【知人E】


 私には教員をしている知り合いがいる。いわゆる教師、学校の先生だ。

 飽くまで、知り合いである。断じて、友人では、ない。

 会うたび私に説教を聞かせようなどとする輩は、友人とは認めない。断じて、認めない。認めたくはない。

 私は、人よりも上の立場にならなくてもいい、と思ってはいるが、人より下の立場だと思われるのは、というよりも、人に見下されることは、「如何せん不愉快である」、と感じる。

 何とも器の小さい人間か。

 だが、それが私という人間である。


 私のことはさておき、話の主人公を、私の知り合いへ戻すとしよう。

『私の知り合いの、説教師改め、教師の話』

 奴は男である。

 そして休み時間は、仕事をするよりも、子どもと遊ぶ方を優先するような、ロリコンである。

 しかし、顔が中世的な顔立ちのせいもあり、女児たちに人気が高いロリコンだ。

(※注意:ここで言うロリコンとは子どもを愛でる者、という好意的な意味で用いている。ペドフィリアやチャイルドマレスターとは明確に区別しているものとする)


 今年もどうやら、というよりか案の定、クラスの女児たちに懐かれ、休み時間には校庭や中庭で、鬼ごっこをすることが多いらしい。

 そしてじゃんけんなどの工程は省かれ、大抵奴が鬼になるのだという。

 というよりも、「せんせぇがオニね♪」と笑顔で宣告されるらしい。

「俺さ、大人じゃん?それに優しいからさ、断れないんだ」と奴はなんとも誇らしげに言って退けたらしいが、そんなことで大人ぶられても逆に、ちゃちな大人に見える、と私は思う。


 いざ鬼ごっこが開始されると、女児たちは一同に駆けだすのだが、ただ駆け回るのではないらしい。悲鳴とも似つかない、黄色い声で、はしゃぎながら駆けまわるのだという。


 しばらく追いかけまわして、奴はふと考えた。

「これって、はたから見たら、危ないおじさんが、女児を襲っているように見えるんじゃ・・・」

 そう思い、大声で女児たちに「先生変態に間違われちゃうから、黄色い声禁止!!」と叫んだようだ。その瞬間女児たちは顔を見合わせて、さらに大きく濃くした黄色い声で、「せんせぇ~へんた~い♪」と四方八方に駆け回った、とのことだ。


「女児に詰られながら、女児を追っかける。エスとエムの両極を成した、画期的な遊びだよ、あれはさ。すげく羨ましいよな?」

 と、奴の友人である私の兄が、熱弁していた。


 普段は頼りがいがあって、見識もあり、尊敬できる兄貴なのだが・・・・・・・。

 これだけは頭を悩ませる。

 それもこれも、奴が兄貴と友達付き合いしだしてからだ。

 早く縁切れてくれないかな。

 でもそしたら、兄貴が悲しむだろうな。

 それは嫌だ。

 だから、私は許そうと思う。

 きっと兄貴は冗談で言っているのだ、私を笑わそうと、こんな陳腐で下品なことを口にしたのだ、と思い込み、許すことにしよう。

 だが、奴は許さない。絶対に。

 二度と姿見せんな!!

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