【友人A-1】

第125話

【友人A-1】


 来月初頭に、友人Aが大会に出るらしい。

 その大会がこっちで開かれるようなので、揶揄嘲弄しに、私も行ってやろうかと考えている。

 ほんのついでのついでに、可哀想なので、特別に、応援もしてやろうと思う。

 ただ、奴にそう言っても、「来なくていい」と拒否されるだろう。


 今までにも、応援しn・・・ではなくて、弥次を飛ばしに行きたいと申し出たことがあったが、冷たく断られた。

 なぜだ? と奴に詰め寄ったところ、はにかみながら、「恥ずかしいから」とぽつりと漏らした。

このときだけは「気障な野郎だ」と思わずに、素直に「カワイイな、おい」と感想を抱いたことは、ここだけの内緒である。


 それから、奴は「キミだって、小説を勝手に読まれたりしたら、恥ずかしいでしょ?」と続けて言った。その時は「なるほどね、確かにそれは嫌だわ」と納得を示したが、今改めて考えてみると、「それ、少し違くね?」と気がついた。

 奴は、私にそう言っておきながら、私以外の多勢の観客が見守る中、踊るのだ。

 私だけが例外であるなんてことは、先ほどの喩えでは、納得できない。


 ということで、奴に内緒で観に行くことにした。

 行くことにしたはいいが、仕事を休めるだろうか?

 アルバイトですら有休があるのだから、私も一日ぐらい休みをもらっても、罰は当たらないだろう。

 ただ、愚痴は散々言われるだろうが。しかも、さらにその倍は陰で、愚痴を漏らされることだろう。


 今適当に思いついたのだが、「陰口」と「陰愚痴」。

 正しくは「陰口」であるが、「陰愚痴」のほうが、しっくりとくる。

 気に入ったので、これからは「陰愚痴」を小説でも使うことにしよう。

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