【友人A】

第124話

【友人A】


 私の友人(私が勝手に独りよがりにそう思っているだけかもしれないが、私とその人物との関係性の解釈を、「友人」という記号で括ることで、私は納得できるのだから、仕方がない)には踊り子がいる。


 私から見れば、踊り子というよりは、暴れ馬である。

 所謂、ストリートダンスなるものらしい。

 廻ったり、片手で跳ねたり、複雑な型というのかフリとでも呼べばいいのか、とりあえず何ともしなやかに、速く、動くのだ。

 一言で表せば、骨が折れそうなことばかりする。これは諺ではなくて、本当に骨折しそうなことばかりをしているのだ。


 お前はMなのか?ドMなのか?と思い、そのまんまの言葉で聞いてみた。

 すると彼は、「僕はきっと究極のSだよ」なんて、にこやかに言う。

「なんですと?」と訝しがると、「ドSを通り越して、自分を痛めつけるのが快感になったんだ。だから、究極のMでもあるのかも」と彼は、無垢な笑顔を向けてきた。

 腹が立つ。

 言っていることは変態なのに、胸がキュンとした。


 しかし、初めて言葉を交わした時に私が、「君はストリートダンサーなのか?」と問うと、「僕は違う」と嫌な顔をされた。眉を顰めるとも違うし、苦い顔、と言うのが正鵠に近い表現かも知れない。

 以前に、ダンスのジャンルについて、彼に尋ねたことがあった。

 ストリートダンスは、大きく「New School」と「Old School」とにジャンルが分けられるようなのだ。

「なんだ、学校なのか」と納得すると、「そうじゃない」と一蹴された。

 それでもめげずに、「君はどっちの学校だい?」と問うと、「僕はOldSchoolのB-BOYINGってやつだよ。一般的にはブレイクダンスって呼ばれているね」と、何とも爽やかに答えやがった。

 気障な野郎だ。


 そして、「そっか、じゃあそのビーボーインとかいうのを踊っているんだ?」と聞くと、「違うよ、自分」とだけ彼は答える。

「は?」と呆気にとられると、「自分を踊っているんだ」と彼はすぐに補足した。

 ホント、気障な野郎だよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます