【猫「夢の邪魔をしないで頂きたい」】

第111話

【猫「夢の邪魔をしないで頂きたい」】


 猫さん猫さん、今日とても胸に響く言葉を聞きました

「別に私は聞きたくないですよ」

 ですが、私は話して差し上げたいのです

「犬さんにでも聞かせてあげればいいじゃないですか」

 犬さんは嫌です

「私はもっと嫌です」

 そんな意地悪言わずに、ささ、どうぞ聞いてください

「では先に、私の今の心境をお聞きになってください。その後で、まだ話したいという意欲が残っていれば、お話になられればよろしい」

 なーんだそんなこと、猫さんのお言葉ならば、むしろいくらだって拝聴したいですよ、ではどうぞお願い致します


「まったく、目の前のこいつは、いつもいつも性懲りも無く、やってきては騒ぎ散らかし、わしの邪魔ばかりして、学習と言う最低限の知能すら持ちえていないのでしょうか。本当に目障りで、五月蝿くて、気持ちが悪くて、ほとほと迷惑ですね。銀河の果てに移住してもらうか、ブラックホールで圧縮してもらうか、細胞一つ残らず消滅してもらうかくらい、して頂きたいものです。そういえば、現代人の若者が遣う言葉で、私のこの心境を一言で表せるものがあるらしいですね、便利になったものです。それをこれからはこいつの名前の変わりに使うことにしましょう。おほん、では失礼して。  お前、マジウザイな  」

 ・・・・・・あ、あの猫さん?いえ猫さま?今日は一段とご機嫌が召されない様でございますが、どうされましたのでしょうか?

「きちゃないゴミが近くにいるかられす」

 は、鼻を摘まれた猫さまも素敵です・・・・・ですが、そんなに睨まれなくとも、いえ、はい、なんでもございません、早急に、ただ今消えうせます・・・ええ、はい、はい、本当に・・・失礼致しました・・・・・・


 はぁ・・・厳しいなぁ猫さんは

 でも、そこがまた、イイ・・・・・・

「ようマゾっ子」

 あら、犬さん、こんばんは。そういえば、急にこの辺が、臭くなったのですが、犬さん何か知りませんか?

「・・・そのネタいつまで続ける気だよ、笑えねーよ」

 ああなんだ、犬さんの腐臭か

「腐ってねーよ、風呂に入ってないだけだよ、菌類に分解されちゃいねーよ、100%ナチュラル体臭だよ」

 しゃべらないでいただけないかしら、息が臭いです

「地味に凹むからそろそろやめてくれ・・・」

 で、なんですか?私いま忙しいのです

「忙しい?どこがだよ、猫のやろうにあしらわれてただけじゃねーか」

 ・・・・・・

「それも昼寝の邪魔しただけでだろ?そうとう嫌われてんな、お前」

 ・・・・

「ダニですら猫のやろうから追い払われていないってのに、お前ときたらさ。ぷぷぷっ笑っちまうぜ、ダニ、ノミ以下じゃねーか、こいつぁー傑作だぜ」

 ・・・

「あれ、言いかえさねーのけ?」

 うん・・・・・・


「いや、まぁ何だ、すまん。言い過ぎた。俺でよければ聞いてやるよ、そのブラジャー的な言葉。暇潰しにくらいなるだろうからな」

 胸に響く言葉です。ブラジャーは流石に無理があります

「響くほど胸、ねーじゃねーか」

 あの世ってどんなところか行ってみたくありませんか、犬さん?

「みたくありません、でしゃばりました、すみません。んまぁ、とりあえず、何か話してればよ、気分もはれてくるって。ハチに刺されたくらいは腫れるって」

 ・・・・・・毛むくじゃらから優しくされたって気持ちが悪いだけですぅ、余計な情けはいらねーですぅ・・・

「ツッコミなしかよ。しかも言葉遣いが変だぞ」

 今から言うのは独り言です、別に毛むくじゃらに話しているわけじゃねーですから、勘違いすんなですよ

「だから、キャラが変わって・・・まあいっか」


 裏山のカラスさんが、『夢は描くもんでも、見るもんでもねぇ。叶えるもんだ!!』ってカカシさんに向かって叫んでいたです。その言葉を聞いて、あちき、酷く心を打たれたです。酷いといっても、悪い意味ではなくって、とっても感動したってことですよ?頭の悪い誰かさんのために語釈してやったです

「やっぱし、そのキャラは直せ。あと独り言の設定はどうした」

 ああ、なるほどなぁ~って、どっかの臭いだけの毛むくじゃらと違って、カラスさんは良いことを言うな~って感心したのです

「無視かよ。ってか言ってくれるじゃないの。だがな、そのクッサイ毛むくじゃらが物申しちゃうぞ、ゴルァ」

 反論や屁理屈はやめてくださいよ

「あんなぁ、夢は叶うもんでも、叶えるもんでもないんだよ」

 そのカッコ悪い耳は電池切れのヘッドホンですか?さっきの私の話聞いていました?

「ああ、聞いていたよ、ヘッドホンでも電池切れでもねーよ」

 その前の話ですよ、ボケナス


「いいか、夢はな、見るか覚めるしかないんだ、それ以上でもそれ以下でもなくそれ以外でもない。第一、夢が叶ったらそれは夢じゃなく、ただの現実だろうが」

 ま~た屁理屈をコネコネしちゃってこの毛むくじゃらは・・・。それは違いますよ、夢が現実になるように努力して、夢を現実にすることを、夢を叶える、って言うのですから

「それこそ、違うね」

 違わないです。では、一体何が違うのですか、言ってみなさい

「今、お前が言ったような夢ってのは、夢じゃない」

 だからなんなのですか

「単なる目標さ」


 ん・・・ううん、まぁそうとも言えますね。ですが、どっちだって大差ないですよ

「大ありさ、いいか、目標ってのはだな、現実を見据えた上で建てる未来への目安だ。だが夢ってのは、現実から目を逸らし、自分の内に作り出す世界に過ぎない。言うなれば現実逃避なのさ。んでもって、大人が子どもに求めているのは夢ではなく、目標と、目標に向かって努力することなんだ。それをさも、夢を見ることのように言う。子どもに苦い薬を飲ませる為に最初は飴を与えて、途中から薬に変えて騙すようにな。その方が楽だから、薬をなぜ飲まなくてはならないのかを説明するのが面倒だから、という理由からだ。しかし本人たちはそのことに無自覚だし、なぜ薬を飲まなくてはならないのかも彼ら大人は説明できない。なぜなら彼らも、元は子どもであり、そういった形式だけを受け継いだだけからだ」

 なら最初から、夢なんて見るな、現実を見据えて目標を立て、それに向かって生きろ、と主張すればいい、とでも言うのですか、犬さんは?

「そうだな、もし言うのであれば、そう言えばいい。そして、なぜそうしなければならないのか、を尋ねられたら、きちんと説明してやればいいのさ」

 説明・・・ですか??何と説明すれば良いのです?

「それくらい自分で考えろよ、自分で考えても説明できないんだったら、そんな理由もはっきりしないことを子どもに教えたり、無理強いするもんじゃないな。ただ、はっきりとした理由はあるんだがな」

 では教えて下さいよ

「別に教えてやってもいいが、多分お前は気分を害するぞ。俺が話すんだから、俺の主観によって含まれる、偏った見解や、無意識の感情のニュアンスが、その説明には影響しているだろうからな。少なからず俺は、その理由に疑問を持ち、懐疑的になっている。俗的に言えばよく思っていない。そのことが聞き手であるお前に、不愉快な印象を与えるだろうな、多分」

 ならもう仰らなくて結構です。もう十分不愉快になっていますから

「賢明なご判断で」

 こんなキチャナイ毛むくじゃらとなんか話したくなかったですのに・・・ああ、猫さん・・・・・・


「・・・あいつのどこがいいってんだよ」ボソボソ

 何か言いましたか?

「いや、なんでもねーよ。じゃあな、おやすみ」

 清らかにおやすみなさい、犬さん

 そのまま起きて来なくていいですよ、永遠に

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