【かーごめ、かーごめ】

第58話

【かーごめ、かーごめ】


 新月の夜。雪が舞っている。

 ここの道の電灯は古く、唯でさえ数十メートルという遠い間合いを空けて道を灯しているのに、それらには壊れているものが多く、今はさらに点々と斑にしか灯っていない。そのため、自身の吐く白い息すら闇に包まれてしまう。そんな独りでは心許ないであろう田舎の砂利道を三人の少女が寄り添って歩いていた。

「こんな幽霊でも出そうな雰囲気でもさー、隣がこんなむっさいおなご達でなけりゃムードがあって大変よろしくなるのに」里美が両手をこすり合わせながら嘆いていた。

「まったくだぜー。隣がリョウ先輩ならどんなに幸せかー」美奈は虫のように舞う雪を見上げている。

「でも私はあなたたちが傍にいてくれてとても幸せよ?」そう言いながら奈々子は二人に雪球をぶつけていた。

「はぁ、隣がこんなむっさいおなご達でなかったら・・・」里美はまた両手をこすり合わせながら呟いた。

駅から彼女たちの家のある集落までは歩いて一時間はかかる。電車内で既に彼女たちの会話のネタは出尽くしており、先ほどからこのやり取りが繰り返されていた。

「そうだ!こんな暗闇だし、どうせ相手が見えないならさ、三人で手を繋いで理想の相手とデート気分妄想しようぜ!!」美奈が二人の肩を後ろから抱き寄せ声を弾ませた。

「ああいいね。寒いし丁度良ろしいと思うよ」

「ええいい案ですね。私レズビアンってものに興味がありますの」

「奈々子・・・それ冗談に聞こえない」里美のこの呟きに乗ってくる気前の良さは、美奈にも奈々子にも残ってはいなかった。

 そうこうしているうちに、里美の両手は塞がれてしまった。

 しばらく無言のまま各自、自分の妄想に浸っていると急に右手を、ぎゅーっと強く握り締められ、里美は我に帰った。

 そんなに熱中するなよなー、里美はそう思い右を見るが雪と暗闇のため良く見えなかった。

 こんなに夢中で妄想しているのはきっと美奈だろう、そう考えた里美は妄想の邪魔をしてやろうと美奈に向かって言った。

「私はリョウ先輩じゃないよー」

「へ?なに?」左から美奈の声が聞こえた。

 あれ? じゃあ右手は奈々子かぁ・・・。

「奈々子ー、私そっちの気ないからさー」

「あら、なんです?」先ほどの美奈の声よりも小さく聞こえた奈々子の声は、同じく美奈の方から響いてきたものだった。

 えっ・・・?

 二人とも左にいる・・じゃあ今私の右手を握っているのって・・・?

 あと数メートルで里美たちは、光の灯っている電灯の下へ・・到達する。

 その間も、里美の右手は未だ強く握られている。

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